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「細雪」のなかの東京(6)

[CAM] 2015年12月25日 20:00

「細雪」からの引用を続ける。

 

>・・・・・・・そしてもう一度尾張町へ出、最後に服部の地下室でまたいくつかの買い物をすると夕飯の時刻になったので、ローマイヤアは気が変らないからと、数寄屋橋際のニュウグランドへ上ったのは、宿へ帰って食べるよりも時間が省けるからでもあったが、一つには、今夜限りでまたしばらくは会えなくなるであろう雪子のために、彼女の好きな洋食の卓を囲み、生ビールを酌んで当座の別れを惜しもうと思ったからであった。それから大急ぎで宿へ帰り、荷纏めをし、東京駅へ駈けつけて、見送りに来ていた姉と待合室で五分ばかり立ち話をし、午後八時三十分発急行の寝台車へ乗り込んだ。・・・・・(418)

 

>・・・・・・・どこかで三人落ち合って一緒に食べたいから、銀座あたりまで出向いてほしい、と姉は云った。妙子は銀座まで出かけるなら、話に聞いているニュウグランドかローマイヤアへ行きたいと云うので、ローマイヤアと云うことにしたが、あたしも行ったことないねん、数寄屋橋で降りてどう行くのん、と、姉が却って幸子に尋ねる始末であった。(529)

 

 ここで出てくる、「ローマイヤ」、「ニューグランド」については、三島由紀夫も「わが銀座」(昭和31年2月『銀座百点』)において、次のように書いている。

 

>そのころマツダ・ビル楼上のニュー・グランドの部分が、赤、青、緑、黄に変幻して、サーチライトの光芒をひろびろと投げかけてゐた。

 私は父母につれられて、そのニュー・グランドや、ローマイヤ・レストランへ行くとき、子供らしい虚栄心を満足させられた。・・・・・・(評論全集2-251)

 

 この「ニュー・グランド」とは、横浜のホテルニューグランドが、1934(昭和9)年に数寄屋橋のマツダビル8階に「レストラン・ニューグランド東京」を開店したものである。スイス人の総料理長が、横浜店と掛け持ちで面倒を見ていたようで、かなり本格的なフランス料理店であったという。

 

 この「マツダビル」(銀座TSビル、東芝ビル)については、下記のサイトの説明を下記に引用しておく。

 

228-01[1].jpghttp://bb-building.net/tokyo/deta/228.html

銀座数寄屋橋交差点角に立つオフィス・商業の複合ビルで低層階はモザイク銀座阪急(旧・数寄屋橋阪急)が入居していた。

かつては「マツダビルディング」と呼ばれたオフィスビルで、東芝の前身の1社である東京電気が本社を構えていた。 なお"マツダ"とは東京電気が白熱電球のマツダランプをライセンス生産したことに由来しており、自動車メーカーのマツダとの関連はない。 1939年に芝浦製作所と合併し、東京芝浦電気になった後も"マツダ"と印字した標章は使用され続けていた。

1956年、低層階に数寄屋橋阪急が開業。1966年に新橋側に増築。外装もリニューアルして「銀座東芝ビル」に改称した。 2007年に東急不動産が1610億円でビルを取得し、新たな商業ビル「東急プラザ銀座」へと建て替えた。

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「東急プラザ銀座」は、2016年3月31日(木)に開業の予定。「Creative Japan~世界は、ここから、おもしろくなる。~」がコンセプトで、銀座エリア最大級となる地下2階~地上11階の商業施設となる。

 

 

「ローマイヤ」レストランは、既に紹介したように、現在は日本橋で「銀座ローマイヤレストラン日本橋店」という名称で営業を行っているようで、そのサイトを見ると「大正14年。銀座で一番初めに本格的なドイツ料理店を始めたレストランローマイヤ。日本で最初にロースハムを作ったことで知られる創業者アウグスト・ローマイヤが提供する本物の味と心温まるおもてなしは、長い間銀座の名店として多くの人々に愛され続けてきました。その名は、昭和23年に発表された谷崎潤一郎の代表「細雪」にも登場しています」とある。