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文学で楽しむ中央区(その5)~御宿かわせみ~

[之乎者也] 2016年11月22日 18:00

天気の良い日曜日、隅田川テラスを散歩していくと日本橋川に架かる豊海橋に着きます。

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豊海橋はそのデザインと風景の美しさからドラマや映画の撮影によく使われる場所ですが、平岩弓枝さんの小説「御宿かわせみ」では、日本橋川が大川(隅田川)に流れ込む豊海橋のあたりにある、大川端(おおかわばた)の旅籠「かわせみ」を舞台にお話が進められます。なお、江戸時代には永代橋は現在よりもやや上流、日本橋川の北側に架かっていたようで、「かわせみ」の場所もちょうど現在の永代通りの真上あたりの場所(地図上の星印のあたり)にあったのではないかと思われます。

               

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「三日ばかり鋭い寒気が襲ったかと思うと、不意に大川の水もぬるむような日もある初春であった。。。≪中略≫。。。南町奉行所の吟味方与力をつとめている兄の屋敷は、とっくに門のしまっている時刻であった。屋敷を出る時から、心のどこかで、今夜は大川端町のるいの許へ行くつもりがある。神林東吾は仲間と別れると、自然、酔った足をそっちへむけていた。豊海橋の袂から少しはずれて『御宿、かわせみ』と小さな行燈が夜霧の中に浮かんで見える。星も月もみえない、しっとりとした晩である。」 

「御宿かわせみ」第一話「初春の客」はこのように始まります。南町奉行所の筆頭与力の弟で剣の腕前から講武所の教授方をつとめる主人公の神林東吾と大川端の旅籠「かわせみ」の主人で、東吾の幼馴染・恋人の庄司るいを中心にドラマは展開します。Ardea2.jpg

「かわせみ」シリーズは、1973年の「小説サンデー毎日」への連載以来、2016年1月の最新作「お伊勢参り」まで295話(文庫で40冊:文春文庫から発売)となっています。「かわせみ」では、江戸の下町を主な舞台として庶民の日常におこるちょっとした事件がショートストーリーで語られており、その魅力は、読者が作中人物と同じ目線で一緒に江戸時代の日本橋、八丁堀、薬研堀、新川、鉄砲洲などの街にタイムスリップできることでしょう。 

Ardea4.jpg(写真は「江戸ホテル(築地ホテル館)」:*パブリックドメイン)

小説は、19世紀半ばの江戸時代から明治へと続きますが、主人公も当初の20代半ばから50代半ばとなり、娘の代に世代交代してお話が続けられます。明治編の「新・御宿かわせみ」では舞台として築地居留地が登場するようになり、A六番女学校(女子学院の前身)、江戸ホテル(築地ホテル館:銀座大火で焼失)、イギリス人のバーンズ医師や入船に店を構える清国人の仕立屋の陳鳳など国際色も豊かになっていきます。

                                      

昼間の街歩きに疲れたら、秋の夜長「かわせみ」シリーズを読みながらを中央区の江戸時代から明治期までの歴史を楽しんでみるのは如何でしょうか。