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越後屋にきぬさく音や衣替

[GPP] 2017年5月 3日 09:00

 「俳句」をテーマに、江戸時代に人気を博した俳人、榎本其角(後に宝井其角)、および、其角にちなんだスポットを紹介します。其角が詠んだ句、其角が過ごした時代・街を身近に感じていただきたけましたら幸いです。

 

 また、「俳句をユネスコ無形文化遺産にするため、推進協議会が発足した」というニュースを、先日(2017/4/24)耳にしました。認定されれば、俳句が一層注目を浴びることになりそうです。

 


1. 俳人 其角(きかく)


 

 中央区日本橋茅場町に、其角住居跡の碑があります。

20170429_其角住居跡.JPG 碑・其角住居跡 (中央区茅場町)

  

 俳諧を文芸の域にまで確立したのが、江戸時代の俳人「松尾芭蕉」です。その芭蕉の門弟で、蕉門十哲(しょうもんじってつ)に数えられているのが、「其角」です。

 静けさを詠んだ芭蕉に対し、其角は江戸を題材に、多くの洒落た句を詠みました。芭蕉の没後、其角は「江戸座」を起こし、江戸っ子気質を反映した粋な句風で一層人気を集めました。

20170429_芭蕉翁像_史跡展望庭園.JPG 芭蕉翁像・史跡展望庭園  (江東区常盤)

 

 では、其角の句を見てみましょう。以下、どちらも江戸を詠んだ句です。(句の意味やゆかりの場所は、次のページ(続き)をお読みください。)

 越後屋にきぬさく音や衣替

 鐘ひとつ売れぬ日はなし江戸の春

20170429_熈代勝覧_越後屋呉服店.JPG 熈代勝覧 (越後屋呉服店)

 

 越後屋にきぬさく音や衣替

 呉服店の越後屋からは、夏の袷(あわせ)を仕立てるために絹地を引き裂くさわやかな音が聞こえてくる。いよいよ衣替えの季節だな。(Weblio古語辞典より引用)

 鐘ひとつ売れぬ日はなし江戸の春

 めったに売れそうもない鐘ですら、売れるほどに賑わっている江戸の正月。 

 

 洒落ていますね。のどかだが賑やかしい当時の江戸の様子が、現代の私達にまで伝わってくるようです。しかも、「つい口に出したくなる」句です。

 


2. 其角 お勧めスポット


 

次に、其角に関連するお勧めのスポットを紹介します。これらは徒歩でも廻ることができます。

 

 熈代勝覧(きだいしょうらん)複製絵巻
 
 [@三越前駅地下コンコース 三越デパート地下出口付近 日本橋室町]

20170429_熈代勝覧_三越前駅地下コンコース.JPG

 熈代勝覧 (三越前駅地下コンコース)

 

 其角が詠んだ江戸の街は、一体どんな様子だったのでしょう?
江戸の街をイメージするには、「熈代勝覧」を実際に見に行くのがよいと思います。

 熈代勝覧は、江戸時代の日本橋~今川橋(神田)の通りの賑わいを描いた絵巻です。その複製が壁画となっています。

 20170429_熈代勝覧_日本橋.JPG
 日本橋 (熈代勝覧

 

 この絵巻は、其角が活躍した時代(今から三百年ほど前)よりも、少し後の時代(今から二百年ほど前)を描いたものです。ですが、上述の句で其角が表現した「日本橋越後屋呉服店」や「賑わう江戸の街」をイメージできる絵巻であり、必見です。解説も充実していますので、是非お立ち寄りいただきたいお勧めスポットです。

 

 其角住居跡 [@中央区日本橋茅場町1丁目]

20170429_其角住居跡.JPG 其角住居跡の碑 (中央区日本橋茅場町)

 

 中央区日本橋茅場町に、其角住居跡を示す碑がたっています。

 其角の住居跡の周辺には、実は見るべきスポットがいろいろあるのですが、それは次回以降で紹介します。(参考:「中央区はじめて物語マップ」 中央区観光協会発行)

 さて、其角住居跡を実際に確認した後は、芭蕉の門弟 其角の気持ちになって、芭蕉庵があった場所まで歩いてみてはいかがでしょうか。

 

 芭蕉翁像(史跡展望庭園)と芭蕉記念館 [@江東区常盤1丁目]

 其角住居跡からは隅田川を隔てた地域、万年橋の袂(たもと)付近に、芭蕉庵がありました。正確な場所は不明だそうです。しかし、芭蕉庵があった辺りに、現在は芭蕉翁像(史跡展望庭園)がありますので、そちらを目指します。

 其角住居跡から芭蕉翁像へは、隅田川や小名木川など、水辺の風景を眺めながらの散策となります。

20170429_芭蕉翁像_史跡展望庭園.JPG 芭蕉翁像・史跡展望庭園

 

 

 時間のある方は、芭蕉記念館にも立ち寄るとよいです。館内のこじんまりした庭園の雰囲気も素敵です。

20170429_芭蕉記念館.JPG 芭蕉記念館

 


3.まとめ


 

 其角住居跡から芭蕉庵付近までのコースは、ウォーキングには丁度よい距離です。

 浮世絵にも描かれた川や橋、更に、江戸の街に賑わいを描いた熈代勝覧絵巻物を実際に見に行ってみると、俳諧を詠む題材には事欠かなかったのだろう、と想像できます。そして、その頃を身近に感じるきっかけにもなります。