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灯ともる頃のいそがしさかな

[小江戸板橋] 2018年4月26日 14:00

 京橋の滝山町の

 新聞社

 灯ともる頃のいそがしさかな

銀座6丁目6番7号。

並木通りに面した歩道に、石川啄木歌碑がある。

若き日の啄木の肖像の浮彫。その下に三行書きの歌が記されている。

歌集「一握の砂」に収められた作品である。

碑の後ろ側に、キツツキが止まっているのが、愛らしい。

 

キラキラしたブランドショップの前なので、啄木をイメージできにくいかもしれない。

この場所は、朝日新聞社の前身である、東京朝日新聞社の創業地なのだ。

啄木は、明治42年3月から校正係として、ここの社屋に勤務していた。

京橋区は、日本橋区と統合し中央区となる前の行政区。

情報の集積地であり、発信の地である。

夕方になれば、取材を終えた記者たちが社屋に戻り、輪転機が響く中で、熱気を帯びた怒鳴り声が飛び交う。

インクの重厚な匂いも立ち上ってくる。

社屋の窓々から、活気に満ちた輝きが流れ出している。

啄木にはめずらしい、動きのある仕事の歌である。

 

中学2年の国語の時間。教師は啄木の歌集から百数十首を選び、暗記する課題を出した。

それを競技として、クラス全員の総当たりの暗唱大会を開くのだ。

いかにもな暗記お仕着せシステムに抵抗は感じていたが、声に出して数回読み上げてみると、胸の中にギシギシと音を立てて降りてくる。

くそっ、啄木め。

 

 不来方(こずかた)のお城の草に寝ころびて

 空に吸はれし

 十五の心

文庫本を手に、盛岡城址で空を眺めてみた。

ずいぶん昔のことだ。

城跡を下りて、中津川に架かる中ノ橋を渡ると、明治43年竣工の旧第九十国立銀行本店本館がある。

この重要文化財の建物を活かして、現在は「もりおか啄木・賢治青春館」という文学館になっている。

展示を見て回る。

あふれ出てくるんだなぁ。

甘酸っぱい、ほろ苦い記憶とともに、啄木の歌が。

 

 
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