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ボーダー屋さん

[王冠とあざみ] 2015年5月16日 22:12

築地7丁目の老舗文房具店が閉店し、

また文化の灯がひとつ消えてしまったのかと

心寂しく感じていた矢先、

その店舗あとは、多彩なフレームのショウ・ウインドウの利点を生かして

フランス直輸入のウエアを取扱う、ショー・ルーム『アンカー』となった。

覗き込むと、小粋なボーダー・シャツが並び、一見、ボーダー専門店の様相。

わたしは便宜的に「ボーダー屋さん」と呼んでいるけれど、

基本は卸だし、訪れる方によって「しましま屋さん」等、

好き勝手に呼ばれているらしい。

 

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日本でも大人気の『ボーダーTシャツ』『バスク・シャツ』(バスク地方発祥)は

1820年代ぐらいから、フランス・ブルターニュ地方の

船乗りに着用され続けており、

現地ではむしろ『marinier(マリ二エール)』漁師風、

『Bullton(ブルトン)』(ブルターニュ地方発祥)と

呼ばれているとのこと。

元祖論争は諸説あるものの、いずれにせよ、のちに海軍の制服に採用、

ボーダーの数は、ナポレオン・ヴィクトリーと同じ数と明確に決定づけられ、

今や次第に全世界に広まって、流行の遍歴に左右されない定番として、

老若男女のワードローブに欠かせないアイテムになっている。

ピカソやヘミングウエイが愛用しているポートレート写真も有名ですね。

皆さんも1枚ぐらいは・・・。ボーダー好きなら何枚も、手元にお持ちでは?

 

 

代表の高松さんは、ハウス・マヌカンが台頭していた

バブル期~後半にかけてアパレル企業に就業し、

一握りを除いては、まったくクリエイティブとは言えない

デザイナーズ・ブランド、キャラクターブランドのイージーさに辟易し、

興味が薄れかけていた時、

ファクトリー・ブランドというカテゴリーに出会う。

 

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学生時代からイギリス音楽にはまり、

その文化的背景を知るなかで、産業革命・工業革命がもたらした

イギリスの工場機能の素晴らしさを肌で感じていたことと相まって、

『洋服の原点』=オリジンに気持ちが向かうように。

 

ところが縁が繋がったのは、

イギリスではなくて、フランス、マリンウエアの老舗。

エージェントを引き受けることになり、数人と独立。

渋谷~青山~銀座と展開して来たが、

時代と年齢に伴って、洒落た立地からかけ離れた、築地へ移転。

 

 

あまりにも赴きが違いませんか?という質問に、

「確かにこれまで付き合いがあるところとは、まったくチャンネルが違うのですが

例えば市場で働く人、

エンド・ユーザーから直接声を訊ける面白さがあります」との返答。

築地市場から数分の距離。ゴム長靴を履いたおじさんがふらっと立ち寄り、

質実剛健な仕事着として購入していくようなことが、

彼にとってはまさに、理にかなった原点=オリジンの再確認になっているよう。

 

店内は、実はボーダー・シャツの他、

高松さんが惚れ込んだファクトリー・ブランドが、多数鎮座している。

 

【armor lux(アルモー・リュックス)】ブルターニュ地方

創業1938年。

ブランド名はブルトン語で「海の光」

マリン・ストライプの、肌触りの柔らかいボーダー・シャツが象徴。

子供服、紳士服、ランジェリーまで、幅広く手掛ける。

 

Fileuse d'Arvor(フィルーズ・ダルボー)】ブルターニュ地方

創業1927年。

『ヴィンテージリブ』 と呼ばれる昔ながらの手間のかかる

編み立て生地が採用されているのが最大の特徴のニット。

やはり、ボーダーが象徴的で、現行フランス海軍に支給されている。

 

GUY Cotten(ギ・コッテン)】ブルターニュ地方

創業1964年。

yellow oilskin item」で揺るぎない地位を築く。

ゴムびきのカッパやつなぎがメインで、

フランス漁師ウエアのシェアなんと99%。

いち早くマジック・テープや溶解圧着を取り入れ、

現代が求める利便性、耐久性を追求。

 

【Arpin(アルパイン)】サヴォワ地方

創業1817年の老舗。

アルプスの羊毛のみを使用し、国家遺産の機械と技術で

製糸から織りまでを手掛けている。

最近ではケミカルな素材も取り入れた、機能性重視のウエアが充実。

オススメは、

北極探検家ポール・エミール・ヴィクトールのシグネチャー・モデル。

 

 

「こういう企業には、現場上がりで、

心底ものづくりが好き+技術が伴ったまじめなオッチャンがいて、

日本向けのサイズや、

僕からのリクエストを本当に良く理解して造ってくれるのです。

だからそこに存在する本物の確かさとストーリーは、

きっと、着てくださったら肌で感じてくれると思います。」

 

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(取材当日は奥様もお手伝い。写真右側が奥様。初めてお会いしてすぐに意気投合)

 

わたしにとっては、若い時に、物の良さ、ストーリーなどに気づかず

皆が着ているからというだけで飛びついてみたけれど、

定番だからこそ、なんだか手におえず、難しいものだったのが、

年齢を重ねた今こそ、確立したスタイルで着こなせるように成ったように感じる。

心身共に熟成した世代が着ることにより、服に説得力が現れるのが

ファクトリー・ブランドの底力なのかもしれない。

 

「ボーダー屋さん」は、早くも口コミで人気を得ているが

目利きが多く、江戸の粋を継承する築地に於いては、至極当然のことなのかも。

ぜひ、高松さんから、ブランド・ストーリーを聞きながら、

人生に寄り添う素敵な一着を見つけてください。

 

中央区築地7-11-10

不定休

 

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