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シドモアが見た中央区(1)鰻は時代と国境を超える

[Hanes] 2019年2月 9日 18:00


こんにちは。新人特派員のHanes(ハネス)です
あっという間に2019年の最初の月、そして節分が過ぎ、立春となりました。
北陸地方では随分と早い春一番が吹き、中央区にも春の足音が聞こえ始めてきたのではないでしょうか

時代を経るにつれ、先日先輩特派員ジミニ―☆クリケットさんがご紹介していた二十四節気を意識する方は減ってきているのではないかと思いますが、
立春の前の約18日間のことも、「土用」と呼ぶことをご存知でしたでしょうか?
「鰻を食べる土用の丑の日は夏だから、夏のことじゃないの?」と思いがちですが、
実は立春、立夏、立秋、立冬の前、つまり年に4度巡ってくる季節の変わり目ともいえる期間のことを指します
それらの期間には皆さんご存知の通り丑の日があり、鰻、うどん、梅干しのように、
「う」のつくものを食べて栄養を摂り、体調に気をつける風習がありますよね。

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それでもやはり夏のイメージが強い土用、丑の日、「う」のつく食べ物ですが、
今ちょうどインフルエンザが流行しているということで、
体調を崩されている方に少しでも元気になっていただければという意味も込めて、
今回は現代日本人とは異なる視点から見たをテーマにしたいと思います

時は 1885年...銀座に日本初の電気灯が点灯して3年後のこと...
後にワシントンの桜並木を実現した人として知られるアメリカ人女性、エリザ・R・シドモアが日本の土を踏みました。
(名前をクリックすると、ナショナルジオグラフィックのサイトに移動します。)
中央区を訪れた際の見聞を含む『シドモア日本紀行』には鰻料理に関する記述(pp. 129-130)があり、こう書かれています

「見栄っ張りには向かない肩の凝らぬ午餐会といえば鰻料理のパーティーです。日本のホストは、仲間の午餐会同様、外国の友達も楽しませてくれます。エドウィン・アーノルド卿〔英国の詩人〕も、料亭"ゴールデン・コイ"での鰻重のおいしさを褒め称えています。このようなおいしい鰻料理は、ほかの茶屋でも楽しませてくれます。料理屋に入ると、客は全員水槽へ案内され、綺麗な水の中で鰻がのたくるのを確認し、真剣に好みの獲物を指示します。まるで籤引きのように不確定にも見えますが、長い包丁を手にたずさえて見守る板前は客の選定を素早く了解し、のたうつ生け贄をぐっとつかまえ、台所にある首切り台[俎板]へと、かどわかします。」

ここからは、鰻は100年程前もごちそうでしたが、今よりもカジュアルな料理だった様子が見て取れます
そもそもうな丼の前身である「うなぎめし」は、文化期(1804~1818年)頃に中村座の金主大久保今助の工夫により生まれ、
葺屋町大野屋が売り出すと、瞬く間に江戸の人気料理になったと言われています

「鰻料理の午餐会は鰻スープ[肝吸い]から始まり、黒鰻白鰻が交互に出され、要望に従いいくらでも新しく注文ができます。鰻は平らに裂かれ短い断片に切られて、炭火で焼かれます。黒鰻と呼ばれる代物は本来こげちゃ色ですが、焼かれる前に醤油に浸すので、そういう色具合になり、白鰻の方は醤油なしで焼かれたものです。雪のような御飯と食べる鰻丼は、人前に供される最高においしい食べ物です。大勢の外国人、とりわけ真価を認めるかの英国詩人は、この卓越した美味に賛辞を惜しみません。河岸にある茶屋[京橋(中央)区霊岸島の大黒屋]では、鰻料理コースを待つ間、手品師や舞妓による楽しい演出で日本の歓待を最高に盛り上げます。」

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ここからは、当時から肝吸いが提供されていたことや、鰻は海外の方にも人気の料理だったことが分かります。
また、先輩特派員CAMさんが以前ご紹介した霊岸島大黒屋にも言及されています。
(霊岸島は俗称「蒟蒻島」と言うそうです。美味しそうな響きですが、由来が気になる方はCAMさんの記事をご覧ください
残念ながら、この鰻屋さんは今は残っていませんが、当時は海外の方へのおもてなしも素晴らしかったようですね

19世紀初めには土用の丑の日に鰻を食べる習慣が広まったとされていますが、
鰻は日本人のみならず、海外の方も美味しいと思えるものだったようです。
そして時代を経た今、21世紀を生きる私たちにとって、鰻はちょっと贅沢な食べ物として愛されています。
よってタイトルにある通り、「鰻は時代と国境を超える」と言えるのではないでしょうか

中央区内には五代目 野田岩さんのように、江戸時代から続く老舗の鰻屋があります。
夏の土用にはまだまだ早いですが、今のうちからこだわりの鰻屋さんを探してみるのもありではないでしょうか

【参考文献】
エリザ R. シドモア(著)/外崎克久(訳)『シドモア日本紀行』(講談社、2002年).

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