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トリビア満載!中学受験問題に学ぶ中央区関連の歴史と文化

[Hanes] 2019年2月18日 12:00


こんにちは。新人特派員のHanes(ハネス)です
2月は節分やバレンタインデー等、季節の行事もありますが、
もう一つ何かを挙げるとすれば、それは「入試」ではないでしょうか。
大学もそうですが、私立の中学校でも入試が行われ、
先日の雪まつりでも「試験どうだった?」というデリケートな話を耳にしました

中学受験とは無縁だった私ですが、「中学受験の歴史(社会)の問題ってどんなものなんだろう?」と気になり、
参考文献(※記事の最後に掲載)に載っている問題をパラパラ見てみたところ、
おそらくセンター試験には出ないだろうというマニアックな内容がずらり...
今回はそんな問題の中から、中央区に関するものをご紹介します!




■2014年度 東京・早稲田実業学校中等部〈社会〉

日本食は健康的な食事として世界から注目されていますが、特に寿司はしゃぶしゃぶなどと共に日本食の代表として人気があります。握った酢飯の上に新鮮な魚介を乗せる「江戸前寿司」は、その名の通り江戸時代に確立しました。江戸末期に書かれた『守貞漫稿』という本には、当時の寿司として玉子巻き・のり巻き(かんぴょう)・車エビ・コハダ・マグロさしみ・エビそぼろ・白魚・アナゴなどの名があがっています。
寿司ネタは江戸湾(東京湾)でとれるもので、当時は冷蔵庫がなかったため、( ① )のように酢でしめたものや、エビや( ② )のように蒸して火を通したものが中心でした。今は人気の( ③ )ですが、当時は安い大衆魚で、格式の高い店では扱われなかったそうです。脂肪分の多い「トロ」は、腐敗するのが早いので猫も食べない「( ④ )」と呼ばれて嫌われたそうです。また、魚介にあう濃口醤油は、江戸に近い( ⑤ )・銚子で作られていました。

【問】文章中の( ① )~( ③ )は本文に出てくる寿司ネタから当てはまるものを選び、( ④ )は呼び名を、( ⑤ )は地名を、それぞれ答えなさい。






皆さん、いかがでしょうか?
勿論即答できる問題もありますが、中には考え込んだり、
「そんなの聞いたことがないよ」と言いたくなったりする問題もあったのではないでしょうか。(私はありました!)

気になる答えはというと...
①コハダ ②アナゴ ③マグロ ④猫またぎ ⑤野田

今では信じられないかもしれませんが、
今人気のマグロやトロは、江戸時代では下魚(下級な魚)やまずい魚として扱われていました。

maguro.jpg
(今では高級なイメージすらあるマグロ

その一方、コハダは最も粋なものとされ、
「コハダの脂を食べなければ鮨の通人ではない、通人どころか江戸っ子ではない」と言われたほどだったそうです
詳しくお知りになりたい方は、参考文献をご覧ください。

④の「猫またぎ」は、魚が好きな猫ですら食べず、またいで通るほど味の悪い魚ということからきているそうですが、
仮に冗談であっても、個人的には検証してみたくなります




■2014年度 北海道・函館ラ・サール中学校〈社会〉

問1 次頁の図は、蘭学を学ぶ人が出島のオランダ人をまねて太陽暦の新年(いわゆる「オランダ正月」)を祝っているようすを描いたものであるが、これはいつごろのようすか。正しいものをア~エから1つ選び、記号で答えなさい。
※図はこちら(早稲田大学図書館のサイトにリンク)をご覧ください。

ア. 1650年ころ イ. 1700年ころ ウ. 1800年ころ エ. 1850年ころ

問2 このオランダ正月についての説明文X・Yの正誤の組み合わせとして正しいものをア~エから1つ選び、記号で答えなさい。
X. オランダ正月は、当時の一般の人々が祝う正月よりもおよそ1か月遅い時期である。
Y. オランダ正月を祝う会では、テーブルに西洋の食器があることや、いすに座っている人は和服を着ていることが図からも読み取れる。

ア. X - 正 Y - 正 イ. X - 正 Y - 誤 
ウ. X - 誤 Y - 正 エ. X - 誤 Y - 誤




こちらは本文や図に大きなヒントが隠されている問題ですが、いかがでしょうか。
「オランダ正月」について初めて聞いた方でも、おそらく解ける問題なのではないかと思います

それでは答えを発表します!
問1:ウ 問2:エ
問1は、蘭学が成熟したのは化政文化なので、1800年ころ。
問2のXは、寛政6年(1794年)11月11日を正月(1795年1月1日)としたことから誤。
問2のYは、いすに座っている人が洋服を着ているので誤。

早稲田大学図書館のサイトで図の「内容記述」を読むと分かる通り、
このオランダ正月の祝宴は、当時京橋区水谷町にあった
大槻玄沢鎖国中の日本にビールを紹介した人としても知られる蘭学者)の自宅兼塾である「芝蘭堂」で催されました
図中に見られる招待客の中には、杉田玄白や彼の弟子に加え、
ロシアから戻って数年の大黒屋光太夫(床の間の前で紙と羽根ペンを持ち、キリル語を書いている人)もいます
そのような状況が分かるこの図は、江戸における最初のオランダ正月を描いた貴重な資料として重要文化財になっています。

しかし、異国の江戸でオランダ正月が祝われ始めた頃...
オランダのネーデルラント連邦共和国自体は存在していたのか...
そのような世界史とも絡む歴史・文化の詳細は、ぜひ参考文献でご確認ください

【参考文献(引用元)】
瀧島有『あり先生の名門中学入試問題から読み解く江戸時代』(エネルギーフォーラム、2015)
※中央区立京橋図書館地域資料室で借りられます