中央区の怪談話
歌妓が恐れた築地の川獺
こんにちは。アクティブな活動はしばらくお休み中のHanes(ハネス)です。
何かと慌ただしくしているうちに、いつの間にか秋が深まってきたことに気づきました。
秋と言うと、食欲の秋、スポーツの秋、読書の秋、芸術の秋などいろいろな秋がありますが、皆さんはどのような秋をお過ごしですか?
私は例年と異なり、少し大人しく「読書の秋」を楽しんでいます。
本の情報収集の過程で、今年は小泉八雲生誕170年にあたると耳にしました。
彼の有名な作品と言ったら『怪談』。
ということで、これまでにご紹介していない中央区内の怪談話がないか調べてみました!
そこで見つけたのが、田中貢太郎『日本怪談大全 第三巻 禽獣の館』(国書刊行会、1995年)に収録されている「築地の川獺」。
築地周辺の運河にもたくさんの川獺がおり、怪異が伝わっていたというものです。
内心「築地周辺に川獺がいたなんて信じられない!」と思いながら読み進めてみることに。
今回はその話を簡単にかいつまみ、実際の風景とともにお届けします。
早速ですが、冒頭には「元逢引橋などのあった三角の水隈」で「三角の不思議な橋が架かった」場所が出てきます。
中央区になじみのある方はもうお気づきかもしれませんね!
その橋というのが、現在中央区役所前に架かる三吉橋です。
当時、築地の川獺による悪戯の話は、その橋のあたりに来る歌妓(げいしゃ)たちを恐れさせていたそうです。
なんでも、橋のむこうの袂にあった共同便所の明かり(石油ランプ)の燈がすなおに光っているか、ちらちらしているかで川獺が出る晩かどうかが分かったのだとか。
燈がちらちらする晩は川獺の悪戯を恐れ、歌舞伎座前を通り、
采女橋を渡って帰ったそうです。
ある夜、築地の待合に呼ばれて行った某妓(あるおんな)は、迎えの車が来ないため一人で歩いて帰ると、采女橋で川がなくなり、辺り一面草ぼうぼうの野原になったのだとか。
こうして人をだますのは川獺の悪戯だと分かっていたため、彼女は賢い判断をし、事なきを得たというしめくくり。
(どのような判断だったのかは、作品を手に取ってからのお楽しみ!)
(今や当時の川はなく、代わりに隅田川の写真を。)
現代の三吉橋、歌舞伎座、采女橋あたりからは、この奇怪な出来事はなかなか想像できませんよね。
しかし、百数十年前の中央区がどのような場所だったのか、当時の怪談や思想から想像力を膨らませて考えるのもまた面白いのではないでしょうか。
余談
少し前に、長らく工事中だった新・京橋税務署および東京都中央都税事務所の外観が見えるようになりました。
新富町駅や中央区役所から近く、とても立派な建物です。
新富座は、今回の怪談に出てきた歌妓たちにも馴染みのあった場所かもしれませんね♪
お近くにお越しの際は、街角で古き良きの文化の名残にふれてみてはいかがでしょうか?
川獺は出ないのでご安心を^^