Hanes

【遠足シリーズ第31弾】復元・晴海高層アパート(後編)
~画期的!将来を見据えた設計とは~


こんにちは。アクティブ特派員のHanes(ハネス)です。
3回にわたってお伝えしてきた復元・晴海高層アパートの記事も今回が最終回。
3層6住戸を一単位とするメガストラクチャー工法および見学中に気になった小物に焦点を当ててみたいと思います。

メガストラクチャー工法

そもそもメガストラクチャー工法とは、建築コストをおさえるという設計上の最大の課題に応えるため、埋立地に必要な長い杭の数を少なくし、鉄骨の量や接合箇所を減らし共用廊下の面積を減らすために採用された架構方式。
そこには社会的に長い寿命を期待される構造躯体と、時代によって変わる個々の生活の器とを分け、社会の変化に対応できる集合住宅の姿が構想されていたとのこと。

下の右側の写真は、各住戸の壁を取り除き、6住戸が1つになった状態(上段、下段)が分かる模型を写したものです。

 【遠足シリーズ第31弾】復元・晴海高層アパート(後編)~画期的!将来を見据えた設計とは~


メガストラクチャーの内部には、各住戸を構成する二次部材としての柱、梁、床があり、住戸間の壁は取り外しがしやすいようにコンクリートブロック積みになっていました。
このブロックは、復元したアパートでも確認できます。

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こうした配慮により、将来の住戸規模の拡大への可能性を持たせた設計が行われました。
実際は、再開発のため築40年たらずで取り壊しとなってしまいましたが、解体前、試しに6住戸を1つにしてみた時の写真がこちらです。

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実現はかないませんでしたが、社会の変化に応じてダンスホール映画館としての活用も視野に入れていたようです。
天井が高いため、洋風のダンスホールにも、大きなスクリーンを導入した映画館にもぴったりですよね。

基準に基づく設計のみならず、可変性のある将来設計までされていた晴海高層アパートがその後も残っていたら、どのように使われたのでしょうか。

住戸に設置された小物たち

最後に、復元・晴海高層アパートを見学している途中に気になった住戸に設置された小物たちを簡単にご紹介します。
まずは浴槽。エレベーターが導入された高層アパートとはいえ、浴槽はまだ木製で和式。

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そこには、注意事項の書かれた案内がついていました。

時系列が前後してしまうのですが、歴史館見学の前に、約60年前に日本住宅公団(現・独立行政法人 都市再生機構)が制作したひばりヶ丘団地入居者向けの動画「団地への招待」を鑑賞しました。
動画には、団地への引っ越しを予定している新婚夫婦が登場し、団地がどのような場所であるのか、住まううえで何に注意すればよいのかなどが分かりやすく紹介されていました。
もちろん、お風呂の使い方についても説明がありました。
ストーブもそうですが、ガスを使う際には窓や換気口を開けるなどし、ガス中毒で気分が悪くならないよう気をつけることは必須!

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そして、住戸内やエレベーター内の小物などを見てみても、馴染みのあるメーカー名がずらり。

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分かりやすい説明や当時の名残が感じられる展示方法により、建築に関する専門知識のない私でも十分に楽しむことができました。
晴海高層アパートでの生活の全貌が気になる方、日々変化する晴海の歴史を改めて学んでみたいという方、現在の晴海と八王子市にあるこちらの歴史館をまとめて訪問してみてはいかがでしょうか。

集合住宅歴史館のご案内

最後に、集合住宅歴史館のご紹介です。
今回、前編中編・後編にわたって取り上げた晴海高層アパートの復元は、代官山アパート、蓮根団地、多摩平団地の住戸の移築・復元とあわせて見学することができます。

独立行政法人 都市再生機構 集合住宅歴史館(旧技術管理分室)
住所:東京都八王子市石川町2683-3
電話番号:042-644-3751
公開日:月~金(祝日年末年始などを除く)
公開時間:13時30分~16時30分
ウェブサイト:https://www.ur-net.go.jp/rd/

見学は事前予約制です。
電話またはメールにてお申し込みが必要です。詳しくはウェブサイトをご覧ください。

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そして、来年2022年3月31日には閉館が決定しています。
その後1年の移行期間を経て、2023年春には北区赤羽台にある団地初の登録有形文化財(建築物)となった旧赤羽台団地ポイント型住棟(スターハウス)に隣接し、新たな情報発信施設としてオープン予定。

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しかし、来場者数の増加が見込めることから、移転後は現在のように各住戸に入ることができるかどうかは不明。
確実に住戸に入って見学したい、間近で見たいという方は、八王子の施設での見学をおすすめします!