中央区立郷土天文館(タイムドーム明石)の第11回特別展「蔵出し これ!クション」が開催中で、同館収蔵品から選りすぐりの郷土資料が展示されている。会期は6月4日から7月10日まで。入場無料。
特別展の詳しい案内はこちらをご覧ください。>>中央区HP郷土天文館ページ
同館が所蔵している資料類は2万5千件におよぶという。今回の特別展にはその中から140件ほどが展示されている。普段は目に触れることがない、貴重な区民財産の数々に出会うことができる。
会場は「生活民俗」「古文書」「印刷物」など6つの資料分類別と、「長谷川時雨」「築地小劇場」「戦争」の3テーマ別をあわせ全9コーナーからなっている。時代は江戸期から昭和期までにわたり、懐かしい思い出の品々を見つけることも楽しみである。
その見どころの一部を紹介してみると、
「生活民俗」では、佃の漁師が白魚献上のために運んだ白魚献上箱には、「御本丸」「御膳御用」などの記載がある。薬種問屋の箱車は、薬運搬用に使った2輪の荷車で、長さ2メートル弱の実物展示。水神社山車模型は、日本橋本町の人形師三代原舟月の作で、10分の1のミニチュア、精巧な加工に見入ってしまう。「古文書」では、岸田吟香の書幅は珍しい掛け軸という。「印刷物」では、浜御殿図、浴恩園屋敷図などのほか、昭和11年に来日したチャップリンがてんぷらを味わっている時事新報写真ニュースが面白い。「資料図書」では、京橋高等小学校児童が綴った、関東大震災の実体験記が注目される。「静止画」では明治期に撮影された、明治座のステレオ写真など貴重な写真が見られる。「絵画」では、14代将軍家茂の上洛錦絵は2点あり、日本橋と銀座付近が描かれている。
テーマ別の「長谷川時雨」コーナーは、通油町生まれで初の女性歌舞伎脚本家として、著書『旧聞日本橋』などが展示されている。「築地小劇場」コーナーでは、俳優座が製作した「夜明け前」の舞台模型が見もの。「戦争」コーナーでは、漫画家・麻生豊が東京大空襲で焼け野原になった銀座の戦後復興を描いた絵巻が圧巻である。
会期中の毎週土曜日(未実施の時間帯もあり)には、同館ボランティアサポーターによる展示案内を行っている。特別展に関連した講演会や学芸員のギャラリートークも開かれ、「築地小劇場」の歴史映像上映(有料)もされている。●巻渕彰