住吉神社、西仲通り(もんじゃストリート)といった有名観光スポットから
ちょっと離れているせいか、訪れる人はあまり多くありませんが、
佃3丁目の春海運河に面した護岸沿いは、通好みの穴場の散歩道といえるでしょう。
ここには、海水館跡の碑が建っています。海水館は、明治38年(1905年)に
開業した割烹旅館です。当時は、目の前に東京湾が広がり、房総の山まで見渡せる
風光明媚な場所だったため、多くの文化人が海水館に滞在したそうです。
島崎藤村の「春」、小山内薫の「大川端」は、ここで生まれた作品です。
「冬の海 見ればかなしや新佃 海水館は わび住みにして」
(by吉井勇・歌集「毒うつぎ」より)
そして、ガイドブックには決して載っていない見所がもうひとつ。
護岸の内側に沿って、見渡す限りのミニガーデンが連なっています。
ひとつひとつのブロックごとに、四季折々の花々が植えられているので、
隣のブロックと見比べながら歩くのも楽しいでしょう。
ただのコンクリートの塀でしかない護岸を、こんな風に利用して、エコと園芸の楽しさを
実現させているとは・・。地域の人々の柔軟な発想と美意識に脱帽です。