〔歌舞伎座〕がいよいよ今月限りで閉場となります。
連日、名残を惜しむ多くの人々が駆けつけてきています。
この日も雨模様のなか、ぞくぞくと人が集まってきます。ぼくもチケットを握り締めて、何度も通った正面玄関をゆっくりとくぐったのでした。入場した途端にほわっと芝居小屋の空気に包まれます。
場内はいつも以上に観客の興奮が広がります。ぎっしりと詰まった観客席には、最後の公演をしっかりと眼に焼き付けようという姿勢が見て取れます。
ご存知のとおり、現在の〔歌舞伎座〕は、何度かの改築を経て大正14年に現在の様式で建築され、戦災で消失後、昭和26年に復興されたものです。日本の歌舞伎文化の発信地として長く人々に愛されてきました。
東銀座というよりも、やはり〝木挽町の・・・〟というほうが雰囲気があるようにぼくには思えます。
3年後に次世代の劇場がオープンするまで、しばらくはお別れです。〝定式幕〟の前に設えられた〝付け板〟(舞台の効果音として拍子木を叩き打つ板)にも愛惜の風情が漂うようでした。
中央区に燦然と輝く芝居文化は、今後も歴史を育みます。歌舞伎座が休場の間も、新橋演舞場や明治座、三越劇場、ル・テアトル銀座など、いくつもの劇場で楽しむことができます。
都市文化の華としてこれからも大切にしたいものです。