中央区内を散策中のふたり。
彼女 「この道、急な上りだけど、なんていう坂なの。」
彼 「ここは、橋に向かって上っているだけだから、坂とは言わないよ。」
彼女 「そう。この辺りは、比較的平坦だから、坂が無いみたいね。」
彼 「んッ。無いわけないだろう。
ほら 『富士見坂』 とか 『潮見坂』 なんていうのは、都内のあちこちにある定番だよ。
富士山を遠くに望んだり、海を見下ろしたりした坂。」
彼女 「エー、そーなんだ。」
といって、散策に持参していたガイドブックを開く。
彼女 「あれっ、坂が書いてないわよ。」
彼 「おかしいな。高層ビルに昇ったり、地下駅に降りたりしているから、なんとなく
坂があるような感覚でいたけど、どうなんだろう。」
彼 「そういえば、江戸時代以降に、埋め立てなどで開発されて拡大したエリアだから、
たいらな道が基本なのかな。」
リュックに放り込んでいた地図も取り出す。
ふたりで、指で道をなぞりながら、隅々までチェックする。
ふたり 「ほんとだ!中央区には坂が無い。」