東京都教育委員会は昨年末(2010/12)、都立高校で学習する東京都独自の歴史科目「江戸から東京へ」の教科書案を公表した(写真はその表紙)。日本の歴史を継続的に学び、自国の歴史と文化を理解することが必要とし、同時に「江戸から東京へ」科目を設置して、平成23(2011)年度から試行導入される。
一般社会人が「江戸・東京」の歴史を学ぶには、数多く出版されているいわゆる歴史書や分野別の専門書・研究書などを読んでいる。が、地域史として通史で簡潔にまとまった書籍はあまりないので、副読本として活用するにはこの教科書は格好の出版物といえよう。
では、このなかで
まず江戸期では、「江戸に来た外国人」として、八重洲の由来となったヤン・ヨーステンやウィリアム・アダムス(三浦按針)を紹介している。「浜離宮に象が来た」のコラムもある。江戸の中心地・日本橋の記述では、「この橋を中心にどのように交通網が整備されたか」と問いかけている。金融制度としては金座、銀座を取り上げている。「三井越後屋」の商法も関心事だ。庶民の楽しみとして「両国の花火」にも触れている。「石川島人足寄場」「蘭学事始」「芝居発祥」など
明治期になると、「ガス灯がともる銀座」「銀座煉瓦街」「銀行発祥の地」といった文明開化への歩みが記述されている。「東京開市 築地居留地」「居留地の学校群」「私学の誕生」のコラムもある。
戦前昭和期では、「昭和の金融史を訪ねて」として日銀や東京証券取引所を紹介している。戦後期は、「ラジオドラマがヒットした時代とは」で、数寄屋橋が舞台の『君の名は』を取り上げているのは興味深い。「江戸情緒から見たウォーターフロント」ではバブル期の開発にも焦点を当て、「どうして佃島に新旧混在の景観が生まれたか、を考えよう」と問いかけている。
教科書案の終盤は、東京スカイツリーや趣味の都・アキバなど今日的テーマも記述している。
■「江戸から東京へ」教科書案は、東京都教育委員会の下記サイトで公開され閲覧できる。
公開ページ数はPDF形式204ページ、52MB。ダウンロードは出来るが、印刷は不可。したがってパソコンやiPad、iPhoneなどで見る(読む)ことになる。
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/pr101216.htm