「新大橋」は、隅田川に架かる斜張橋で、中央区日本橋浜町と江東区新大橋を結んでいます。
昭和52年3月竣工。
橋の中央の橋柱には、安藤広重の江戸名所百景「大はし あたけの夕立」の絵と、明治45年架設の旧橋のレリーフがはめ込まれています。
時代を継いで移り変わった「新大橋」の姿が、そこに描き出されています。
橋の西詰北側に、大小二つの碑があります。
巨大な石碑は、関東大震災の「避難記念碑」。
左側の小さな石碑は、「人助け橋のいわれ」の碑です。
新大橋は、かつて「人助け橋」と呼ばれ、親しまれていたそうです。
大正12年9月1日に発生した関東大震災の折、隅田川に架かる多くの橋が火災で焼け落ちました。
その中で「新大橋」は、火災をまぬがれ、多くの人命を救い、避難路としての役割を果たしたのです。
明治45年架設の旧橋の時代です。
火災を避けて避難する人々は、荷物を携え、逃げ道を求めて、橋に殺到しました。
いかに鉄製の橋といえども、荷物に火が移れば、燃え盛る炎は一気に橋上を走ります。
誘導に当たった警察官は、体を張って荷物を捨てさせ、延焼防止と避難路の確保に努めたといいます。
小さな石碑は、その勇敢な行動をたたえて建立されました。
職責をまっとうした警察官の行動が碑文として残るなど、なかなか無いことです。
この警察官の陰に、誘導、救助、消火などに、身命をなげうった、多くの人々がいたことでしょう。
とっさの判断で、群集を適切にさばいた警察官が、それら名も残らないけれど、使命を果たし、支えあった人々の代表として、碑に刻まれているのだと思います。
大震災の中で、困難に立ち向かっている多くの人がいます。
「がんばれ!」と強く念じます。