世界3大肖像画家の一人とも称される「写楽」――突如現れ、10ヵ月間で活動を終えた。その正体は誰か、別人説が飛び交った、謎の絵師と言われるゆえんである。いま、写楽を取り巻く話題で賑わっている。
「天明寛政中の人。俗称斎藤十郎兵衛。居、江戸八丁堀に住す。阿波侯の能役者也。廻りに雲母を摺りたるもの多し」
というのが、定説になってきている。
住んでいたとされる八丁堀の場所は、地蔵橋であることが、その後に見つかった『諸家人名江戸方角分』に記載されているという。また、斎藤家の菩提寺の過去帳でも確認されている。家系が喜多流の能役者であったことも分かったそうだ。
地蔵橋は、八丁堀与力同人組屋敷地の中心辺りに位置し、亀島川からの大下水の堀割に架けられた橋で、現在は茅場町二丁目と三丁目の丁界付近である(上図の切絵図丸囲み部分)。
東京国立博物館では、特別展「写楽」(写真下)が開かれている(6月12日まで)。写楽の作品は同展図録では146点とし、そのうち142点が出品されて、同時代の別の浮世絵師が描いた絵との比較ができる興味ある展示だった。千葉市美術館「ボストン美術館浮世絵名品展 錦絵の黄金時代―清長、歌麿、写楽」も、逸品が揃っている展覧会である(6月5日まで)。
NHK BSプレミアム(BS103)「在外秘宝シリーズ」の番組宣伝によれば、5月11日(水)午後9:00~10:30 (3)「徹底分析・写楽全作品~浮世絵版画・全145枚が語る美の秘密~」として、全145枚のうち3分の1が海外にある在外秘宝で、全図の魅力を解き明かしていく、という。5月12日(木)午後9:00~10:30 (4)「写楽・解かれゆく謎~ギリシャの浮世絵が語る正体~」では、2008年ギリシャ・アドリア海の島で、写楽肉筆の扇面画が発見された。急変する画風、忽然と消えた謎、写楽の真実に迫る。●巻渕彰