昨年の「事件」以来謹慎していた「海老様」こと市川海老蔵さんが9ヶ月ぶりに舞台復帰するというのは、もはや7月の歌舞伎界というより社会的なニュースになっているようだ。
というわけでまだ時差ぼけ気味の状態で私も8日昼の部へ。同行者はパリ・ロンドン公演まで追っかけた熱烈ファン。心配で仕方が無いらしく落ち着きがない。「初日が開いているのだから大丈夫」と外野は無責任な言葉をかける。何しろ昼の部は発売間も無く完売!という盛況。客席にはTVで見かける著名人の姿もちらほら。話題性もあるが現在興行的に「客が呼べる」役者の1人であることは紛れも無い事実。そして舞台に立った時の「華」「オーラ」も。新之助時代の2000年歌舞伎座、「源氏物語」光の君で舞台に現われたときの期せずして客席に湧き上がったどよめきとためいきを今でもまざまざと思い出す。
復帰の舞台の演目は、東京では海老蔵襲名公演以来の「勧進帳」の富樫。「初心に戻って出直す」という意味からか。弁慶は団十郎さん、義経は梅玉さん。舞台後方の長唄連中の中、立三味線の巳太郎さんの隣に立唄の巳紗鳳さんが久しぶりにならぶと流石市川宗家の18番ものらしい。五色の揚幕が巻き上げられて富樫が登場すると場内割れんばかりの拍手。「待っていた」ファンの拍手は温かい。「少し痩せたのでは」とささやく声が聞こえる。それにしても本当に錦絵そのままのような姿にため息が出る。無事に幕が下りてまずは一安心。
昼の部は「鳥居前」「楊貴妃」、夜の部は「吉例寿曽我」「春興鏡獅子」「江戸の夕映」
26日千秋楽。お問い合わせはチケットホン松竹0570-000-489