歌舞伎座で22年前から始まった「八月納涼歌舞伎」が演舞場に移り「花形歌舞伎」となって2回目の今年、三部制公演体制は変わらないが、ちょっと淋しいのは納涼歌舞伎を牽引していた勘三郎さんの名前がないこと。9月の大阪新歌舞伎座公演から1ヶ月公演への本格復帰と報道されているが、東京での勘三郎さんを一日も早く観たい。
とはいえ、今日は初役で四役早替りと前評判の高い勘太郎さんの「怪談乳房榎」をお目当てに第三部へ。八月だけに浴衣姿の若い人たちもチラホラ。3階席迄満席の盛況。
ご存知のように「怪談乳房榎」は三遊亭円朝作の三大人情話の一つ。従来、絵師菱川重信、下男正助、うわばみ三次の三人を早替りで演じるという形が定着しているが、今回は三遊亭円朝を加えて四役をしかも初役で演じるというもの。父親の勘三郎さんの当たり役だけに来年六代目勘九郎襲名も決まった勘太郎さんがどう演じるか見もの。お関は七之助さん、磯貝浪江は獅童さん。
幕が開いて茶店女で小山三さんが出てくると大拍手。「お若いですね」「お元気ですね」とのセリフが聞かれるとまた拍手。小山三さん1920年生まれ!!勘太郎さんは声だけではなく台詞回しも、一瞬姿まで勘三郎さんにそっくりになってきた。三役早替りが本当にスムーズかつスピーディでその度毎に大拍手。田島橋で重信殺害の手伝いをさせられて逃げる正助と三次が花道七三で替るところは全く分からなかった。大詰めの「角筈十二社大滝の場」の滝つぼでの本水を使っての立ち回りは2列目の私たちのところにまで水しぶきが飛んでくる大熱演。勿論最前列には「かぶりもの」が配られてこれぞ本当の「かぶりつき」。
劇場を出ると昼の名残の暑さが押し寄せてきた。外界の暑さをすっかり忘れさせてくれた3時間だった。勘三郎さんの不在を感じさせない熱演にあらためて拍手。
B1の「喫茶東」でもかき氷