隅田川とセーヌ川の友好河川の縁に沿って、比較しながらも改めて中央区の魅力を再発見するシリーズの第4回です。 (プロローグ〟は≪序≫の項をご覧下さい。 『隅田川とセーヌ川』≪序≫
さて今回は、それぞれの川につながる運河(堀)とそれを囲むまちの様子を取り上げてみます。
セーヌ川はそれ自体が観光の名所ですが、実はちょっと脇道に入って、本流につながる運河や堀割をめぐるのも一味変わった風情を楽しむことができます。
サンルイ島近く、バスティーユ広場のほうへ向かうあたりの運河にはヨットや観光船の船着場があり、〔アルスナール港〕と呼ばれています。小さな橋を渡ってこの運河のたたずまいを眺めるのも一興です。
また、この〔アルスナール港〕からさらに水路は延びます。一部地下化されていますが、再び地表に姿を現すのが〔サンマルタン運河〕です。 水辺は市民や観光客がそぞろ歩きを楽しんだり、河畔のカフェで憩いをとったりしています。 古き時代の雰囲気を今に残す、おすすめの散策コースです。
中央区はもちろん〝水運のまち〟ですから、江戸開府以来、区内には多くの運河が設けられてきました。 その後かなりの堀が埋め立てられましたが、その往古の姿をしのばせるのが、新川近辺です。かつて酒や醤油の集積地として舟運で賑わった河岸は、今でもどことなく懐かしさを感じさせてくれます。隅田川本流のリバーサイドとあわせて散策するのにはこれまたおすすめです。
また、比較的歴史は浅いものの存在感があるのが〔晴海運河〕です。ちょうど石川島のところで隅田川本流と分かれて、江東区との区境を成し、相生橋、春海橋をくぐって東京湾へとつながっていきます。休日にはジェットスキーを楽しむ人を見かけることもあります。中央区の新しい水路の顔です。
隅田川にもセーヌ川にも多くの支流がつながり、船が行き来するとともに、人が動きます。人が動けば物語りが生まれます。都市の歴史を綿々と綴ってきた運河とそれを取り巻くまちの風景にしばし溶け込んでみるのはいかがでしょうか。