新春を迎えると、すがすがしい気分の中で、必ず見たくなるものがあります。
雪をいただく、神々しい富士の姿です。
「一富士、二鷹、三なすび」は、めでたい初夢のベストスリー。
関東地方の冬は晴天が続き、高層ビルの窓越しに、引き締まった空気の中に立つ「富士山」を見ることができる日が多くあります。
絵のような姿に見とれてしまいますが、見れば登ってみたくなるもの。
とはいえ、日本一の高さを誇る富士の山。
おいそれと近づけるものではありません。
さあ、ここに登場するのが、中央区湊1丁目に鎮座する、鐵砲洲稲荷神社。
この神社の右奥、北西方向に進むと現れるのが、富士の溶岩を積み上げてできたミニチュア版の富士山。
富士塚です。
急な岩場を登ると、頂上に浅間神社を祀っていました。
登り口には、ご胎内(ぽっかりと開いた穴)も造られています。
現在は6メートルほどの高さで、裏手はマンションに囲まれています。
江戸時代の書物、「江戸名所図会」にも描かれたというのですから、山開きの旧暦6月1日には、なかなかの人出だったのでしょう。
富士塚と呼ばれる人工の山は、江戸時代から、富士信仰、富士講によって造られました。
関東地方を中心に広く分布しています。
街歩きの途中、品川区北品川の品川神社や、渋谷区千駄ヶ谷の鳩森神社、文京区本駒込の富士神社境内に、登りがいのある富士塚も見つけました。
遥かに仰ぐ富士山に、一度は登ってみたい。
でも、簡単には登れない。
ならば、せめて名残をうつす富士塚の頂上に立ちたい。
切ない夢を叶えてくれる、祈りの姿がうかがえます。