中央区の鉄道に関わるエピソードをお伝えしているこのシリーズ、今回を入れてあと2回の予定です。最後までご覧いただけたら幸いです。
今回はちょっとした〝番外編〟です。というのも本物の鉄道の話ではないのです。今回の主役は〝鉄道模型〟。好きな人にはたまらないちょっと高価な大人のコレクションだと言えるでしょう。
ぼくも中学生の頃、HOゲージのレールを居間に敷き並べて列車を走らせるのが楽しみでした。当時でもなかなか子どもには手の出ない値段だったと憶えています。ちなみにHOゲージとは「軌間16.5mm」のサイズのことであり、車両は一般に縮尺1/87とされています。20世紀前半には鉄道模型の主流として世界に定着しました。
今やさらに小さなサイズで値段も手ごろなNゲージ(軌間9mm)が普及していますが、やはり質感といい、迫力といい、HOゲージの魅力は色あせません。
HOゲージのレールの上を列車が走る様はなかなかに勇ましいものです。
そんな憧れの鉄道模型のメッカともいうべき店が中央区銀座にあります。
ご存知〔天賞堂〕さんです。
もともと印房店としてスタートし、戦後、昭和24年から鉄道模型の製造販売に着手されたそうです。きっかけは当時の社長の趣味だったとか・・・。
天賞堂の鉄道模型は品質が優れているため、当初は海外からのほうが注目度が高かったといいます。実際、細かいところまでよくできており、ぼくも子どもの頃、天賞堂製の模型が欲しくてたまらなかったのです。ようやく手にしたのは〝EF65系電気機関車〟でした。そのときの感動やいかに。
今も天賞堂のビルに入ると愛好家たちがひっきりなしに訪れます。人気なのは国鉄カラーの特急電車や気動車、寝台車など、さまざまです。人それぞれに好みがあって、店内でも鉄道談義がやみません。
もう一つの見ておきたいのは、ビルの端にまといつくように立っている愛らしい天使像です。1997年のリニューアル時にシンボルとして設置されたとのこと。未だに少年の夢を追い続ける鉄道模型ファンの気持ちをうかがうようにも見えます。
中央区のまたまた一つの名所として、「鉄道模型の殿堂」を紹介させていただきました。