30年ほど前、初めての転勤で東京に来る前から「セイロカ」と言うチョッと風変わりな名前の病院があることは知っていた。しばらくして病院の英語名がSt. Luke's International Hospital と知ってミッション・スクール出の私には合点がいった。「聖路加」とは「聖ルカ」だったのだ。
この病院は明治7年に宣教師が設立した病院を、紆余曲折の後、聖公会の宣教師ルドルフ・トライスターが明治35年に買い取り「聖路加病院」としたものである。更に昭和8年には「聖路加国際病院」となっている。
病院のある明石町辺りは私の散歩ルートにあたり病院の近くを通るのだが、外から見る限り大病院の風情があり多くの医療従事者らしき人を見かけ何となく近寄り難いイメージがあった。精々、隣にある聖路加タワーに立ち寄ってお茶や軽食を楽しむ程度であった。
しかし、数年前に東北を旅行中に家族が転んで、目の辺りにひどい傷を負った。地元の大学病院で緊急手術を受けたのだが、そのまま東北に留まる訳にも行かず紹介状をもらって帰京した。偶々、知人が聖路加で働いていたこともあり聖路加でフォローをお願いすることになった。何回か通院した後に入院して再度、手術を受けることになり一週間ほど入院加療した。
病院に入って分かったのは、救命救急等の緊急の場合を除いては、基本的には他の医療施設からの紹介がある患者を優先的に治療していることだ。病院内は一般的な病院のような病院臭が殆どない。また、ナースステーション等もペーパーレスが進んでおり書類が極めて少なくスッキリしている。欧米の病院のイメージに近い。
病室は約500室あり全てが個室になっている。各室ともバス、トイレ付でホテルのような快適な感じを受ける。現在の所、半分程度が差額ベッドとのことで、逆に言えば半数は保険での利用が可能である。もっとも選択権は患者には無いようだ。 院内にはキリスト教の病院だけにキリスト教のチャペルもあり何となく安らぎを覚える。コンビニや食堂もあり近代的な設備となっている。
また、院内では各種のボランティアが働いておられ入院患者はもとより通院患者への援助が提供されている。 「聖路加」と云えば、地下鉄サリン事件を思い出す方も多いだろう。緊急医療にも力を入れているようで常時、救急車の出入りが絶えない。近くにこの様な総合病院があることは心強い限りだ。
最後に「聖路加」と云えば何と言っても有名なのは100歳を超えて未だ矍鑠と医療に従事される理事長の日野原重明医師である。聖路加の歩く宣伝タワーをして今日も活躍されているのを見聞するだけで嬉しい。