中央区は日本の演劇の歴史の中心地でも会ったことは皆さんご存知のとおりです。改築中の〔歌舞伎座〕や〔新橋演舞場〕〔明治座〕などと並んで伝統を誇るのが、〔三越劇場〕です。
日本橋の三越本店の6階に設置されているこの劇場は、大劇場と言うよりも「こじんまりした高級シアター」という感じがピッタリです。公式ホームページによると、1927(昭和2)年に〔三越ホール〕として開設され、戦時中の閉鎖を経て戦後現名称で再オープンしたそうです。歌舞伎や各種劇団の公演のほか、落語や邦楽の公演も行われ、親しみの深い劇場です。
造りがまた凝っていて、大理石を用いた壁面やステンドグラスをはめ込んだ天井などは気品と落ち着きを醸しだしています。まるでヨーロッパのオペラハウスのような気取った心持ちにもさせてくれます。中央通路の天井部にも様々な紋様があしらわれていて、戦前の職人の手抜きをしない作業に感心します。中には獅子のような模様もあり、三越のプライドを表現しているようにも思えます。
この日は〝劇団新派〟の公演「華岡青洲の妻」がかかっていました。新派の二大巨頭である、水谷八重子と波乃久里子が熱演し、会場の観客を魅了しました。
ちなみに〝劇団新派〟は1888(明治21)年に大阪で旗揚げされた劇団「大日本壮士改良演劇会」というのが出発点だそうです。士分を離れてやや鬱憤をもった壮士といわれる人たちが、何か新しいものを演劇の世界に求めたのではないかと推察します。何となく、明治の先進的チャレンジ精神が彷彿とするネーミングのように思えます。その後、歌舞伎に代表される伝統演劇を〝旧派〟となぞらえて〝新派〟という名前が与えられたということです。
したがって、〝新派〟は来年で125周年を迎えます。最近は若い有望な役者も増えてきて、この劇団の発展が楽しみです。現在の公演は今月23日まで開演中です。機会があったら、三越劇場の雰囲気も味わいがてら、是非観劇に出かけてみて下さい。