7月28日、東京の真夏の夜空を彩る「隅田川花火大会」が開催されました。
今年はスカイツリーの「天望デッキ」から見下ろす鑑賞の仕方も加わりました。
観覧席から、レストランの窓越しから、ビルの屋上から、川面に陣取る屋形船から、
チャーターしたヘリから、交通規制された道路上にシートを敷いての楽しみ方もできます。
今年はぜひ見てみたい場所がありました。
「両国橋の上から、花火を見てみたい。」
隅田川の花火大会は、徳川吉宗公の時代、大飢饉と疫病の慰霊を祈願して、両国の川開きに花火を催したのが始まりとされています。
「鍵屋」、「玉屋」の掛け声がかかり、見物人であふれ返る「両国橋」。
数々の浮世絵に描かれてきたにぎわいは、平成の現代にあって、どう見えるのでしょうか。
JR総武線「両国駅」から歩いてみました。
国技館前の通りも、交通規制がされており、安心して空を見上げながら、うちわを使うことができました。
両国橋の上は、片側通行・立ち止まり禁止です。
花火の音が響いてきます。
川の上流に、打ち上げ後の煙がただよい、火薬の匂いが伝わってきます。
期待感、気分が盛り上がってくる瞬間です。
見えた。
思った以上に、重なり合う色と、球形や飛び散る光の流れが大きく見えました。
スカイツリーが、花火とコラボするように、色を変化させながら、存在感を示しています。
浮世絵から抜け出たような、提灯を飾った屋形船は、時代を超えた一級のお大尽遊びです。
立ち止まり禁止というものの、競い合う花火の一瞬に、携帯を向ける人の足が止まります。
誘導の交通整理員や警察官の方々の声も高くなります。
酒焼けしたオッチャンが、やたら誘導の方とコミュニケーションを取りたがっていました。
「無粋だ」などと言いなさんな。
都市には、都市ならではの楽しみ方というものがあるのです。
中央区と墨田区両国をむすぶ両国橋。
江戸時代、武蔵と下総の二国をつなぐ、陸上交通の要所でした。
橋詰の広小路は、江戸有数の繁華街だったと言います。
先日、テレビの歴史案内番組で、江戸城を囲む防御の要である大川(隅田川)に、両国橋がかけられたのは、徳川幕府が安定期をむかえ、文治政治へと転換していく象徴的な事だと言っていました。
両国橋の私の一押しは、総武線の鉄橋が、花火の光を受けて半円型に浮かび上がるところです。
列車が通過するシーンは、「撮り鉄」でなくとも、シャッターを切りたくなります。
ビルの谷間を、打ち上げ会場方向に歩きます。
建物の角が、鋭角に花火を切り取ります。
建物に反響する花火の音は、都市ならではの余韻を生み出していました。