中央区の魅力をいろんな角度から探っていますが、今回は神社仏閣に注目し、その界隈の話題を中心にご紹介するシリーズを始めることにしました。
あわせて、「文化の秋」ですから、素人がその気になって〝吟行気分〟で訪ねたいと思います。あくまでも〝気分〟ですので、不出来な点は何卒ご容赦下さい。
さて、第1番は『寶田恵比壽神社』(以下、「宝田恵比寿」と表記します)を選びました。
今度の週末(10月19・20日)はこの神社の祭礼である〝ゑびす講〟が催されますが、どちらかというと同時に参道で開催される〝べったら市〟のほうがよく知られているかもしれません。
〝べったら市〟で売られる名物の〝べったら漬け〟は大根の麹漬ですが、ほんのり甘くて季節感を感じる食べ物です。中央区観光協会の推奨名産品にも指定されています。
そもそも、宝田恵比寿神社は江戸城の拡張に際して、旧・宝田村から移住してきた住民たちが自らの鎮守様を祭ったのが始まりです。もとの宝田村は今の千代田区役所付近に在ったそうです。このときに、家康公の三河以来の家来であった馬込勘解由という武士が徳川家由来の恵比寿様を神社に安置したということです。
馬込勘解由はこの一帯の土地を支配しただけではなく、三伝馬取締役という役職を務めました。大伝馬町という地名はこの役職に由来しています。伝馬とは当時の交通・文書を司る役所であり、江戸だけではなく各地の要所に置かれたものです。神社の近くにその由緒を記述した説明版が設置されています。
この日は祭礼を控えて準備が進んでいるところでした。今から祭礼当日の賑わいが目に浮かびます。お参りを済ませて、名物のべったら漬けをお土産に帰る人が参道にあふれることでしょう。
ぼくの場合は、参詣の後に人形町もしくは室町あたりへ歩いて旨いものを食べたり、ちょっと一杯ひっかけるのが楽しみとなっています。それじゃ、どっちが目的か分からないですね。
何年か前の夕景の様子を載せておきます。 秋の爽やかな風と夕方の淡い色彩の中で気分もリラックスし、まっすぐはなかなか帰れないものです。でも、中央区はどこにも魅力ある町があるので、寄り道してしまうのはしかたないですね。
〝ゑびす様〟は商売繁盛、家族繁栄、日伏せにご利益があると言われています。七福神のなかで唯一日本古来の神様です。(その他はインド・中国からの渡来)原初は海の神様であり、海の向こうからやってくるものへの畏怖や敬意から神格化したのではないかという説もあるようです。
上方では正月の〝えべっさん〟が有名ですが、東京では秋の〝ゑびす講〟が最も賑やかです。もちろん12月の〝しまいゑびす〟や正月の〝初ゑびす〟も大切な縁日ですよ。
帰りの楽しみも含めて、皆さんも是非お出かけ下さい。
では、一句。
『宵酒や べったら市の 波の果て』