区内の寺社を巡りながら季節の話題を提供し、下手な吟行気分で図々しく記事を書かせていただいています。今回はその2回目です。
秋たけなわ。「楽し都、恋の都♪」と『東京ラプソディー』に歌われた銀座の町も、今はすっかり哀愁の色を帯びて〝大人の町〟らしい雰囲気を漂わせています。
銀座には有名な『銀座八丁神社巡り』があります。銀座の町のあちらこちらに鎮座まします神仏を訪ねて歩くこのコースは、〝銀ブラ〟を兼ねて厳かな気持ちも味わえるおすすめの散歩道です。中央区観光協会のホームページでも紹介されていますので、是非ご覧下さい。銀座八丁神社巡り
ある日の夕刻近くにこのコースを歩いてみました。それぞれのスポットが個性的で魅力があるのですが、今回はその中から〔龍光不動尊〕をご紹介します。ご存知のとおり、松屋銀座店の屋上にあり、鎌倉時代から伝わるという不動明王像が祀られています。
〝不動明王〟は密教の中心をなす大日如来の化身ともいわれ、仏教発祥のインドに由来を有する憤怒神です。また、こちらの仏様は、その名の読みに因んで〝りゅうこう〟(流行)にご利益があると喧伝され、いつしかファッション関係の方の参詣が増えたといいます。銀座の町ではなるほど腑に落ちる話です。 [写真1:龍光不動尊]
次は松屋と同じ並びの三越銀座店屋上の〔出世地蔵尊〕をご紹介します。
今は埋め立てられてしまっている〔三十間堀川〕から明治初年に掘り出され、「世に出た」ことから「出世」の名が献じられました。「誠意を尽くしてお願いすれば必ず通じる」と信じられ、多くの信仰を集めています。〝地蔵菩薩〟は「胎内の仏」を意味するサンスクリットの漢訳であり、人々を胎内に包む込むように救うとされています。日常のイメージは、何と言っても〝子どもの守り神〟ですね。 [写真2:出世地蔵尊]
もちろん、同じ百貨店の松坂屋銀座店屋上にも〔靏護稲荷神社〕(かくごいなり)があります。何と八丁神社には〝お稲荷様〟が7社も含まれているのです。古くは「江戸名物。伊勢屋、稲荷に犬の糞」というやや口汚い言い草がありました。
落語から知ったことですが、正確には「武士、鰹、大名小路、広小路、茶店、紫、火消し、錦絵。火事に喧嘩に中っ腹。伊勢屋、稲荷に犬の糞。」というそうです。当時の江戸の喧騒や雰囲気をよく表していると思います。〝稲荷〟が入っているのはあちらこちらの町内にお社があったんですね。ちなみに〝犬の糞〟が入っているのは「生類憐みの令」への揶揄ではないかとも言われています。
銀座一帯では今月27日から11月4日まで、恒例の「Autumn Ginza 2012」が催されます。この中のイベントの一環として『銀座八丁巡り』の〝開運スタンプラリー〟も11/1~4に受け付けます。この爽やかな季節に是非出かけてみませんか。
オータムギンザ2012 イベント
[写真3:オータムギンザ2012 パンフレット]
さあ、そんなこんなで歩いているうちに、いつしか夕闇が迫ってきました。銀座通りが暮れなずんでいきます。
かつて『たそがれの銀座』という歌謡曲がありましたが、銀座って夜の似合う街なんでしょうか。
トワィライトに道行く人がふと落ち着きを見せ始める時間、こういう都会の風景もまた味わい深いなぁとぼくは思います。
[写真4:銀座4丁目から新橋方面を眺める]
ちょうど「Autumn Ginza 2012」が始まる今週末の27日は〝十三夜〟(旧暦9月13日)です。
古来より、旧暦8月15日の〝十五夜〟とは別に、この夜のお月見を日本人は楽しんできました。〝十三夜〟は本家中国にはない日本独特の習慣だそうです。満月少し手前の月を〝名月〟として味わうなんて、風流ではないですか。微妙な〝美〟を大事にしてきた日本人の感性でしょう。
「秋の陽は釣瓶落とし」・・・夕景から夜景への変化を楽しみながらの〝銀ブラ〟を是非お試し下さい。素敵な風景に出会えることでしょう。
[写真5:和光と十三夜の月(合成)]
今日の一句 ・・・
ツンデレの銀座仕込みの十三夜