中央区の聖地を巡り、吟行を兼ねて散策を楽しむシリーズの第3弾です。
今回は趣向を変えて、明石町にある〔カトリック築地教会〕を訪ねてみました。
とある秋の日にこの教会を訪れると、緑の木々に囲まれて、穏やかな佇まいを見せてくれました。
明治維新の後、キリスト教布教のために来日した神父たちがはじめは稲荷橋近くの商家を借りて仮の教会としたところから歴史が始まります。その後、日本では長崎、横浜に次いで、1874(明治7)年に、聖堂が創建されました。
ところが、この最初の聖堂は関東大震災で消失したため、1927(昭和2)年に改めて建てられたのが現在の聖堂です。一見石造りに見えますが、実は木造モルタル造りだそうです。
パルテノン神殿に見られる古代ギリシアの建築様式「ドーリア式」(ドリス式ともいう)に拠っており、正面には6本の柱が存在感豊かに並んでいます。聞くところによると、パリの〔聖マグダレナ教会〕(仏語では、聖マドレーヌ教会)を参考にしたといいます。
昨夏、ぼくはパリを訪れた際に、〔聖マグダレナ教会〕にも立ち寄ってみましたが、なるほどよく似ています。パリの中心部と同様に、東京の真ん中である中央区に由緒ある教会があることは誇りに思います。
教会内部には、1876(明治9)年にフランスで鋳造されたという銅製洋鐘があり、〝江戸のジャンヌ・ルイーズ〟として親しまれています。なお、聖堂は東京都選定歴史的建造物ならびに、洋鐘とともに中央区の区民有形文化財にも指定されています。
聖堂の影が静かな雰囲気の中で庭に伸びています。周りの緑に溶け込んで、心が安らぐ空間です。
さて、教会から少し歩くと〔あかつき公園〕があります。地域のイベントにもよく使われるこの公園は地元の憩いの場所でもあります。園内には季節の草花が植えられており、訪れる人にアクセントを与え、風景に彩を添えてくれています。
親子連れやお年寄りはもちろん、ビジネスマンが一息つく場所としても活用されているようです。
さらに築地市場方面に歩くと〔折峰ベーカーズ〕というしゃれたお店があります。ぼくのお気に入りのパン屋さんです。味は折り紙つきです。全粒粉のオーソドックスなものから、様々な工夫のある菓子パンまで、ラインナップも豊富です。
明治以来のエキゾチックな雰囲気を残す明石町界隈は休日の散歩におすすめです。秋の爽やかな空気の中、ゆっくりと歩いてみてはいかがでしょうか。
最後に今日の一句。
聖堂の柱の襞の秋深し