今月の出し物は 名作喜劇三本です。
①お種と仙太郎
息子夫婦の仲の良さを羨む姑と、その姑にいびられても
ジッと耐える嫁、そして姑を懲らしめようと乗り出す家族。
笑いの中に様々な形の愛情が盛り込まれています。
②大当り高津の富くじ(江戸育ち亀屋伊之助)
上方落語の名作「高津の富」をヒントに舞台化された作
品。伊之助は上方和事の"つっころばし"で演じられてい
ましたが、今回は中村梅雀に当てて江戸育ちに設定を
変え、江戸前の気前のいい若旦那・伊之助をご覧いただきます。
③おやじの女
亡くなった兄の妻と愛人との悶着の間で、弟が右往左往する可笑しみを描いた新派の
味に近い新喜劇作品。 水谷八重子・波乃久里子・渋谷天外という劇団新派と松竹新
喜劇の本格的な共演作品にご期待下さい。
出演者は水谷八重子さんら江戸の新派、 渋谷天外さんら大阪の新喜劇、 中村梅雀さ
んら元前進座のみなさんです。 それぞれの劇団やお家カラーがあり それらが溶け込ん
でマーブルのような楽しさが生れていました。
②の中で八重子さんの落としたかんざしを 天外さんがさりげなく拾ってあげていたり、
③では八重子さん久里子のかけあいはさすがで、 "憎しみと愛情は背中合わせ"のセリフ
がきいていました。
今年は喜劇発祥110年に当たります。曾我廼家五郎・十郎さんが歌舞伎でもなく にわか
でもない新しい笑える芝居を作ろうと一念発起し、「喜劇」を生み出します。時は明治37年
2月、 場所は道頓堀の浪花座でした。