人形町を散策していて偶然、古風な店を見つけました。和菓子屋さんかと思ってのぞいてみると暖簾には「香」と書かれていました。なんだろうと思って入ってみたのが香老舗松栄堂さんでした。京都に本店があり大阪から札幌まで全国に七店舗を有するお香の店でした。創業は宝永二年(1705年)の老舗である。お店の方にお話を伺うと、仏事以外にも使うお線香やお香、さらにはお香を楽しむための道具類を売っているとのことで、確かに店内にはふくよかな香りが漂っていました。松栄堂さんは日本橋店の他にも銀座八丁目の銀座店などがあるとのことでした。帰宅後ネットで調べてみると中央区には松栄堂さん以外にも何軒かお香を扱う店があることがわかり、中央区内のお香屋さんを巡ってみました。
鳩居堂と言えば誰もが知っている日本一高い地所にあるお店です。売っているのは創業以来三百年間の和文具店とは知っていましたが、実はお香の世界では九百年間にわたり天皇家の御料として伝えられた名香の秘法を三条実美より親授されたお香の世界でも有名なお店のようです。お店をのぞいてみるとたまたま、香港からの旅行者が買い物をしていました。筆とお香を買ったとのことで、香港でも中国製が入手できるが品質は日本の物には敵わないとのことでした。
日本橋高島屋さんの和服売り場の一角に京都山田松香木店があります。創業は寛政年間と言われるから200年以上の歴史がある。このお店にはお香を入れる為の昔の薬種問屋のような箪笥があります。数えてみたら150の引き出しがありました。すべての引き出しにお香の名前が書かれており、その種類の多さには驚かされました。お店には組み紐細工のお香袋のようなものも展示販売されており雅な気分になりました。
お香と言うと仏事のお線香や焼香を思い浮かべますが、お店の方に伺った話では、リラックスするために香りを楽しまれる方が多くなっているとのことです。昔は銀座の夜の世界で働く女性のお客様がかなり多かったが、最近ではOLさんが趣味で買われるケースが多いようです。また、お店によっては男性客にも人気があるようです。自宅で香を聞いてリラックスされたり、名刺入れにお香を忍ばせ名刺に移り香をつけてお洒落に楽しまれているようです。また場所柄、外国人のお客様も増えているとのことです。
どのお店も創業以来数百年間の歴史のある老舗ですが、現代にその歴史を伝える様々な取り組みをされています。見て、香りを聞くのは心和むひと時だと感じました。私もあるお店で「香りでつなぐ支援の輪」と称して会津木綿の香り袋を売っていたので土産に求めて楽しんでいます。皆さんも一度、お香屋さんに足を踏み入れると自分に合った香りが見つけられると思います。