劇作家の北条秀司の「雪降れば佃は古き江戸の島」の句碑が佃の渡しの碑の近くにあります。今年は寒い日があり何度か雪の佃を眺める機会があったのだろうが、結局は見ることが出来ませんでした。
佃島は徳川家康の時代に摂津国西成郡佃村の漁民が江戸に下り築造したものです。爾来佃大橋が完成する昭和39年まで300年にわたり渡船で行き来するところでした。現在では石川島播磨重工業の跡地に出来たリバーシティー21が隣接し、あたかもマンハッタンを見るような景色ですが、ひとたび佃に踏み入れてみると其処彼処に江戸の面影が残っています。
漁村のように立て込んだ家々は今日でもやっと人一人が通れるような路地を隔てて建てられています。マンション暮らしの私にはとても理解できないような隣近所との濃密な関係が今も生きている街のようです。
隅田川の畔には大きな漁船が係留されているし、島内の船溜まりには小さな漁船やモーターボートが係留されています。ここだけ切り取れば誰も銀座から徒歩圏の街とは思わないでしょう。
佃の町並みを見て車の少ない道路で子供たちが買い食いをして遊んでいる様を見ると、まるで半世紀ほど歴史を遡ったような安らぎを覚える不思議な空間です。