外堀通りと永代通りに面した呉服橋交差点の東南角に三井住友銀行呉服橋ビルがある。その正面に「時をつなぐ」と題したモニュメントが設置されている(写真)。これは建築家・前川國男が設計した代表作である旧日本相互銀行本店ビルの部材の一部で、日本初の鉄骨造全溶接工法など先駆的な技術を伝えている。
前川國男(明治38年(1905)-昭和61年(1986))は新潟市で生まれ、東京帝大卒業後、パリのル・コルビュジェ事務所に入る。日本建築家協会会長など歴任。主な作品は東京文化会館、東京海上火災ビル本館、東京都美術館など。アントニン・レーモンドのもとでも学び、戦後の近代建築界をリードしたという。上野の東京文化会館はル・コルビュジェが設計した国立西洋美術館と並び建ち、師弟対決建物として知られている。
日本建築学会賞作品賞を受賞した旧日本相互銀行本店ビルは昭和27年(1952)に建築された。軽量化を図るため、2階までを鉄骨鉄筋コンクリート造、3階から9階までを鉄骨造全溶接工法とし、外壁に当時高価であった特注アルミサッシュと軽量コンクリートパネルを採用したのはいずれも日本初であった。
戦後の間もない時代に、カーテンウォールなど新技術の導入と徹底した工業化に挑んだ革新的な建物として特筆すべきものとされた。旧ビルの歴史的価値を伝える史料展示室が現ビルの1階にある。旧ビルは平成20年(2008)に解体、現ビルに建て替えられた。@巻渕彰