旧暦2月の初午は今年は3月12日になりますが、今日ほとんどの2月初午祭や二の午祭は新暦で行われているので年中で一番寒い季節に当たっています。旧暦であれば、初午は少し春めいた頃に巡ってきたもののようです。
三大稲荷の一つ「笠間稲荷」では新暦と旧暦の両方で初午祭を行うとのこと。江戸時代には「事始め」の時期で寺子屋に入門するのもこの日が多かったとのこと。ベストセラーの「なぜ日本では八幡神社が一番多いのか」によれば、「稲荷社」を名乗る神社は2070とされているが摂社末社や街中の小祠を入れれば実際には稲荷が一番多いはず」と書いてある。「もともと五穀豊穣の神だった稲荷は次第に漁業の神、商売繁盛の神、そして関東では屋敷神として広く信仰を集めるようになり「火事、喧嘩、伊勢屋、稲荷に犬の糞」といわれるほど多くの稲荷が勧請されたと言われている。」(「日本の暦と年中行事」)。
江戸時代には芝居小屋には「大入りや安全祈願」を願って必ずお稲荷さんが祀られて、2月の初午には楽屋でも年中行事として稲荷祭が催されそのすべてを管理、主催していたのがそばに部屋のある大部屋役者たちで「稲荷町」と呼ばれていたのはご存知の方も多いことでしょう。(別な説もあります)。江戸三座もそれぞれ楽屋に稲荷大明神を祭祀していて、中村座は「銀杏稲荷大明神」!、市村座は「大津稲荷大明神」(何故か森田座がない)で「商売繁盛」や「安全祈願」に霊験あらたかな稲荷大明神はあらゆる意味で芝居興行の守護神にふさわしかったことでしょう。
現在でも歌舞伎の上演される劇場には稲荷が祭られています。以下の写真は歌舞伎座「歌舞伎稲荷大明神」と新橋演舞場「演舞場稲荷大明神」、明治座の稲荷です。歌舞伎座と新橋演舞場は鉄砲洲稲荷神社の氏子です。明治座の稲荷は笠間稲荷を勧請したものだそうです。国立劇場の稲荷は花園神社の稲荷を勧請したものと会員向けのバックヤードツアーで伺いました。楽屋入口の着到板のそばにあります。観劇の折に、劇場のお稲荷さんにもちょっとお参りしてみませんか?国立劇場をのぞけばいつでもお参り可能です。(演舞場稲荷はチケット売り場の裏にあります)。