最近「新劇」をご覧になりましたか?かくいう私ももうウン十年も見ていません。若い人に「新劇」といっても「?」という顔をされて「劇団の名前」とTVに出ている俳優さんの所属先と言ってはじめてわかってもらうのが当たり前になってきました。現在も活動中の「文学座」「俳優座」「民芸」等の「戦後の新劇のすべての源」となった築地小劇場は90年前の本日6月13日に開場しました。
今、中央区民カレッジで「築地小劇場創設90周年から近代演劇を考える」という講座が開かれています。2回目の本日が丁度90年前の開場日に当たるという偶然。既に著名であった小山内薫が若い土方与志の熱に巻き込まれるように「演劇の実験室演劇の常設館、民衆の芝居小屋、」を目指して開場したのは皆様よくご存じのことと思います。第一回目の演目は「白鳥の歌」(チェーホフ)「海戦」(ゲーリング)「休みの日」(マゾオ)の3作です。プログラムには田村秋子や千田是也の名前が見えます。演出は小山内薫と土方与志です。近代演劇の実験場として新劇活動の拠点となりましたが、1928年の12月に小山内薫が急逝するとその3か月後には築地小劇場は分裂。築地小劇場としての活動はわずか5年で終わり、その後は離合集散を繰り返して劇場の建物も1945年の終戦で焼失してしまいます。しかしながら演劇界で活躍する多くの人材を輩出し、現存の劇団のルーツとなり「戦後の新劇のすべての源」がこの築地小劇場にあったのは言うまでもありません。早稲田の児玉先生も仰っていましたが日本の演劇の特徴は「ジャンルが積み重なっていく―積層性」にあるそうです。新しい演劇が誕生した時にそれ以前の演劇がなくなってしまうわけではなく、それぞれが生き続けていく―世界の中でも稀な現象とのこと。私たちが現在様々なジャンルの演劇を楽しめるのはこのためです。「断捨離」ができないのもこのためでしょうか?久しぶりに「築地小劇場跡の碑」を見に来て馬鹿なことを考えています。90周年に熱い情熱を劇団創設、演劇活動に捧げた演劇人たちに思いをはせてみるのは如何でしょう?
「築地小劇場跡の碑」築地2-11-17 NTTデータ築地ビルの壁面