皆さん、「銀座には、なぜ超高層ビルがないのか」、ご存知ですか?
「それは、区役所が高さ制限の規制をしているからだろ」、「うん、"銀座ルール" というのがあるからだろ。」という返答が返ってきます。
私は、10年ほど前なら、それについて何ら疑問を持ちませんでした。
銀座が好きで、銀座通りだけでなく、並木通りとか、マロニエ通りなどを歩くのが好きでも、「何で銀座を歩くのが好きなんだろう?」とも考えませんでした。
歩道が整備されているからだけではありません。 目に優しい空間、落ち着いた建物の色、ウインドウの中の洒落たジャケットなど。
そして、銀座通りの歩行者天国。人々は、決して、急ぎ足では歩いていません。
こういうことが重なって、ゆったりと銀ブラを楽しめるのだなあ、と感じ、考えることが出来るようになりました。
最近、「銀座には、なぜ超高層ビルがないのか 」ということを、追及してみようという気になりました。 そんな時に、この本を教文館で見つけました。
著者は、銀座街づくり会議・銀座デザイン協議会事務局長の 竹沢えり子 様です。
この方の講演は、築地社会教育会館での「銀座学」、紙パルプ会館での「環境まちづくりフォーラム」でお話を拝聴したことがありました。
しかし、限られた時間内での、「銀座フィルター」とか、「銀座ルール」などについて理解を深めることはできませんでした。
その後、宅地建物取引主任者試験に合格し、地区計画などの開発に関する制限などの新しい知識も出来て、違った興味も湧いてきて、この本の事を知りました。
この本の構成は、次の様になっています。
第1章 銀座とはどんな街か
第2章 大規模開発前夜、90年代の銀座
第一次地区計画「銀座ルール」の策定
第3章 200メートルの超高層ビルが銀座に?
2004年から「銀座街づくり会議」が始動
第4章 銀座の声を行政に
第5章 新建築は銀座との事前協議が必要に
銀座デザイン協議会の船出
エピローグ
あとがき
(読後感想とお勧め)
銀座の歴史、江戸町人地の土地と建物との関係がつくりだした空間サイズを基本としている事、
銀座の街並みは財産だと大事にされてきたこと、だから銀座の街歩きは楽しいのだとか、気づかされます。
この本の中には、「共有」という言葉が何回も出てきます。大規模開発に対して、住民、店主の方々の現状認識と将来に対するビジョンの共有、価値観の共有とか。
銀座三越の増床計画については、空中回廊の設置はどうして可能になったのかという疑問が晴れました。
歌舞伎座の建て替え計画については、なぜ、従来の高さ制限をクリアできたのかも分かりました。
そして、銀座6丁目計画についても、詳細に記述されています。
著者の方が凄い、偉いと思ったことは、豊富な語彙だけでなく、形容詞、副詞を使用した、しっかりとした文章の記述です。これが、「銀座らしさ」の文章かと感嘆しました。
そして、建築基準法とか、都市計画に関する知識が凄く豊富だなっと思っていたら、あとがきのところで、 大学の門をくぐり、ご自分がかかわってきたことについて改めて勉強したとの事。本当に敬服しました。
中央区在住在勤の方々に限らず、建築、宅建業、デザイナーさん、いろんなジャンルの方々に購読をお勧めします。
銀造