銀座8丁目の資生堂ギャラリーで開催中の展覧会、「
1950年代半ばから80年代にかけて、
前田美波里さんや山口小夜子さんがモデルとなった広告は、
「一業、一社、一生、一広告」
をモットーに、資生堂のイメージを視覚化することに生涯をかけ、伝説的な広告の数々を生み出されています。
1926年、盛岡に生まれた中村さん。
絵を描くことやデザインへの憧れを持つようになったのは、少年時代、薬局に貼られていた資生堂のポスターの美しさに心を奪われたことからなのだそう。
会場には、中村さんが高校時代に撮られたモノクロームの小船の写真が展示されていました。
普通の岸辺と小船なのに、とても詩的な画面で、完成された美しい構図が印象的でした。
その後、東京美術学校に進学した中村さんは、戦後、なにも商品がない店先に貼られた、資生堂の原節子さんのポスターを見つけます。
それは、売るものがない商店主を励ますために資生堂が配ったポスターだと知った中村さんは、資生堂で働くことを決意し、門を叩いたのだそうです。
そして、少年時代に憧れた「花椿」の表紙をデザインした、山名文夫さんのいる宣伝部で嘱託として働けることとなり、1949年には正社員として入社。
1957年、先輩の代理で香水の広告を手がけたことが転機となり、その後多くの資生堂の広告を手がけられています。
中でも、香水は化粧品会社の顔となる商品で、企業のブランドイメージに関わるものなので、大事に育ててこられたのだそう。
中村さんの手がける香水のポスターは、その一枚が詩のように美しいもの。
「計数に表現することのできない表情とか、雰囲気、空気感。
誇張して言うと『人間の存在感と心』が現れることが大切」
表現について、そうおっしゃっている中村さん。
文字のビジュアルも大切にされ、コピーライターの方へも、
「漢字が5つ6つ、それからあとは平仮名で宝石がこぼれてくるようなコピーを」
と具体的に指定をされていたのが印象的でした。
ギャラリーに飾られている、時代を彩ったポスターはどれも、輝くような美しさ。
広告を作るというだけではなく、
「日本の女性の美しさで、日本の未来を拓く」
ということを常に念頭に置いていらっしゃったような、中村さんの祈りにも似た気迫を感じました。
上品で静かな情熱とエレガンス。
美はうつろい、一瞬の中に永遠を見るもの。
それを一枚の広告にこめた、美への誠意がつたわってきます。
「中村誠の資生堂 美人を創る」は、6月29日まで、資生堂ギャラリーで開催されています。
「中村誠の資生堂 美人を創る」
2014年6月29日(日)まで
資生堂ギャラリー
〒104-0061 東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
Tel : 03-3572-3901 Fax : 03-3572-3951
11:00~19:00 最終日の日曜は11:00~18:00
毎週月曜休 (月曜日が祝日にあたる場合も休館)
入場無料