佃にある住吉神社は徳川家康公の江戸入府とともに創建された由緒ある神社です。3年に一度の例大祭においては、珍しい"八角神輿"が巡行することでも有名です。前回の大祭では江戸時代以来新造された神輿が披露されて話題になりました。
次の大祭は来年2015年です。神社創建370周年の節目を記念し、盛大に開催されることでしょう。是非皆さん今から楽しみにしておいて下さい。
そんなわけで、今年はいわゆる"陰祭り"にあたるため、神輿の巡行は行われません。といっても毎年の祭礼はきちんと行われます。今年は8月6日が祭礼の日にあたり、おごそかに執り行われます。
古くは旧暦の6月末に行われていたこの祭礼は、夏越の厄払いの意味もあったはずです。真夏の盛りに、健康を祈り、暮らしの喜びを感謝する祭事だったのではないかと思います。
さて、祭りの花形である神輿を中心とした祭礼行事を受け持つのは、地元佃の「佃住吉講」の皆さんと、月島地区(佃の一部、月島・勝どき・豊海・晴海)各町内の「若睦」のメンバーです。神輿巡行の無い年でも、必ず一同揃って参詣し、域内の無病息災と大祭の成功を祈願するのが伝統となっています。それぞれの町内から提灯を掲げてお参りするところから「献燈祭」と称しています。
8月2日(土)、その「献燈祭」当日にあたり、勝どきにある「お旅所」(神様が巡幸の際にお休みになる場所であり、神社のサテライトみたいな場所です)に、各町内からそれぞれ揃いの浴衣(「長着」(ながぎ)といいます)を身につけた面々が集まりました。拝殿に参拝したあと、列を組んで住吉神社までゆったり参詣の歩みが始まります。
進むにつれて次第に日が暮れていき、神社に到着するころには提灯の明かりが薄闇に浮かび上がります。「佃住吉講」の皆さんが丁重に出迎えるという形式をとり、一体となって神社に拝礼します。神官の祝詞奏上や代表者の玉串奉奠などの神事の後、お神酒を頂戴します。最後に三本締めが境内に響き、無事祭事は終了しました。
下町の男たちは祭りや人情が大好きで、今から来年の例大祭が楽しみで仕方ない様子です。夏の夜のひととき、隅田川の川風がほのかに流れ込む中、風情と情感のあふれる風景でした。