昭和36年、東京オリンピック3年前の作品である。新東宝制作でこの題名、ということから、銀座あたりの光景を見るだけの価値しかないB級(又はC級)作品を覚悟してレンタルしたが、見てみると意外にも準A級作品。少し得した気分であった。
石井輝雄は東映で網走番外地シリーズを撮った監督である。「完成度の高い映画作家とは逆の方向へ走り続け、むしろそれによって映画賞などとはまったく無縁の逆巨匠として未踏の位置を築き上げた」という評がある。本作品はストーリィ展開が御都合的すぎるが、バックミュージックもよく、しゃれた作品となっている。
銀座、新橋などの実風景がかなり出てくるのは、新東宝が資金不足で、ゲリラ的な(隠し撮り?)街頭撮影をやらざるを得なかったことによる「結果」のようであるが、そのおかげでオリンピック大改造前の東京の光景が、陰影あるモノクロ画面に豊富にとらえられている。
服部時計店の時計塔を見せるショットから始まり、途中の時間もこの時計塔で表わす。その他、三吉橋を俯瞰するシーン、二人が築地川でボートに乗るシーン。ボート乗り場は萬年橋のあたりのようで、東劇、松竹会館、新橋演舞場が見える。ラスト近くでは汐留川の川べりに、西洋の古城のような形をした映画館・全線座が見える。
画面中のバーの看板を見ると「ストレート40円、ハイボール50円」などとある。
三原葉子は「新東宝のセクシー路線のトップスター」というイメージとは異なり、なかなか愛嬌があり好感が持てる(ただし、題名にかかわらず、この作品ではセクシー場面は全くない)。アラカンは「役柄とはまるで逆でやさしい、よう気のつく子」と評したというが同感できる。また、若いころの池内淳子が美しい。