「銀座化粧」は昭和26年の作品です(You Tube で見ることができます)。このなかでは、埋め立てられる前の築地川とその界隈の町並みが美しくとらえられています。
ヒロインの田中絹代は銀座の女ですが、それほど華やかでもなければ若くもありません。6歳くらいの男の子を抱えて女ひとりで生きており、新富町にある長唄師匠のしもたやの2階を借りているという設定です。
もともとは、銀座も築地も、四方を川で囲まれた「島」でした。三十間堀が昭和24年頃に戦災瓦礫で埋め立てられて以降、そうした川は次々に埋め立てられ、築地川もほとんどが消えることになりました。映画の中では、晴海通りを築地の方から銀座へ歩いてきて三原橋のあたりで、田中絹代が堀雄二に「このへんは三十間堀と申しまして、埋め立てない前は夜などは両側のバーや喫茶店の灯が光に移ってとてもきれいでしたわ」と語ります。三原橋では、当時建設中であった東京温泉なども映されています。
敗戦日本の独立が昭和27年4月ですから、当時は「占領下日本」(Occupied Japan)でした。 しかし、映画の中では英語の街路表示なども見られず、また服部時計店ビルも米軍PXだったはずですが、その様子は見られません。街路を外国人兵が歩いている様子も出てきません。ただし、銀座4丁目交差点で、田中絹代が堀雄二に「ついこのあいだまでは両側に露店が出ておりました」と語っています。三十間堀埋立の後にはまだ完全に除却されていない瓦礫も見えます。
その他、画面では、聖路加病院の十字架の塔や入船橋、明石橋、築地橋など、当時の築地かいわいの風景を見ることができます。