「こっち来て、こっち来て、こう回って。」
お父さんの手を引いて、坊やが神社の参道に設けられた「茅の輪」をくぐります。
タッタッタと、8の字にくるくる回る動きが、すっかり気に入ったようです。
竹を組んで、チガヤを束ねた輪を吊るす。
異界への入口のように立てられた円と、無限大を示す∞の字の歩き方。
言葉にできぬ、力が引き出される気がします。
茅の輪の効力を語る歌があります。
「水無月の 夏越の祓 する人は 千歳の命 延ぶというなり」
延命長寿の祈りです。
この和歌を唱えながら、輪をくぐるという習わしもあります。
町内会の掲示版に、形代(かたしろ)の受付の文がありました。
六月晦日、紙で作った人形に身のケガレを移して川に流し、清める。
再生の儀式なのでしょうか。
この円い茅の輪。実はお正月の「しめ縄」の原型とする説もあるのです。
輪を解けば、一本の縄になります。
清浄な場を示す縄。
丸くなったり、線になったり、変幻自在なその姿は、太さや色合いからして青大将。
日本の野山に広く生息する比較的なじみのある「へび君」です。
日本の神様には、へびの姿を借りた存在は珍しくありません。
川や沼の守り神、主であり、雨を呼び、渇きを潤し、豊かな実りを与えてくれる。
小判や宝玉との相性も良いようです。
なんといっても、脱皮しながら再生・成長していく姿はとても神秘的で、
はかりしれぬパワーを感じます。
野を横切り、大河を渡り、荒波を越えて移動し、再生を繰り返す力に、
古人は「安珍清姫」のように、「女性の情念」をも重ねてきました。
恵みの雨の季節です。
晴れた日を選んで、お近くの神社の「茅の輪くぐり」で、新たなパワーを
いただいて来ましょう。
私が向かっているところですか?
築地の波除稲荷神社です!