住吉神社の例祭(本祭り)では、宮神輿が渡御する前日、宮神輿巡幸の道清めと悪魔払いの為行なわれると云う、獅子頭巡行の伝統が承継されています。
清祓いを受けた後、いよいよ年番から順に一部二部三部に分かれての獅子頭の宮出し。
合図と同時に若衆達は一斉に境内に駆け込み、獅子頭に飛びつきます。
獅子の鼻先を早く掴むと。縁起がいいと云われ、激しい争奪戦が繰り広げられます。
手を真っ直ぐ伸ばしたままの状態で獅子頭を担ぎ上げ、「おりゃ、おりゃ」の掛け声と共に、お囃子が流れる中、氏子区域に繰り出します。
各戸の家内安全を願いながら獅子舞のごとく練り歩き、お囃子の舞台の前で揉み合いが続くと、太鼓・笛の音も高鳴ります。
獅子頭は雌雄一対で、宮出しの際は耳は立ててあり、安置される時は耳は下を向いています。
雄と雌の表情も微妙に違い、頭の上にある角が長いのが雄、丸いのが雌とされます。
巡行に用いられる三対の獅子頭の他にも "佃島" には七対の獅子頭が保存されています。
なかでも「黒駒の獅子」「龍虎の獅子」は区民有形民俗文化財に、また獅子頭宮出しは区民無形民俗文化財に登録されています。
現在は造園業者の手になる、本祭り期間中臨時に獅子頭を安置する葦簀張りの獅子小屋(獅子の庭)は、箱庭を大きくしたような造園物で、他では見られない風習のひとつに挙げられています。
例祭に欠かせないもののひとつに「揃衣(そろい)」(と呼ばれる "浴衣")の新調があります。
宮神輿は揃衣を着て、白足袋を履かないと "佃島" では担げないとされます。
佃島(佃一丁目)には、一部<上町>・二部<下町>・三部<東町>からなる男子のみで構成される佃住吉講という氏子組織があり、住吉神社の例祭は勿論、神社で行なわれる祭祀全般の仕切り役を担っているとの由。
講員は「世話人」「大若衆」「若衆」(入会1年目は新縁<しんべり>)の三つに序列され、身につける揃衣や役割が異なる厳然たるタテ社会と聞きます。
平成27年度の「揃衣」デザイン(左から世話人・大若衆・若衆) 右端は番外