国の特別名勝と特別史跡に指定されている浜離宮恩賜庭園は、江戸の大名庭園の面影を今に伝える貴重な遺産。
関東大震災や戦災で庭園内の多くの建造物や樹木が焼失しましたが、昭和53年の「中島の御茶屋」の再建を手始めに、平成16年度からは、文化財庭園を保全し次世代に継承するため、当時の意匠・技法を忠実に再現し、現代に蘇らせる復元・整備事業がスタート。
「内堀」の護岸や「中の橋」などの老朽化した施設の修復に加え、庭園の景観を構成する上でも重要な存在である御茶屋群の復元に着手。
平成22年には「松の御茶屋」の復元工事が完了。
次いで今年5月、平成25年度から取り組んでいた「燕の御茶屋」の復元工事が完了し、今般内部が特別に公開されました。
当初は9月17日、18日、22日の3日組まれていましたが、17・18日両日は雨天の為中止、22日のみの公開となりました。
予定では、①9:30~10:00 ②10:30~11:00 ③13:30~14:00 ④14:30~15:00 の計4回、定員は各回先着順15名にて実施。
復元された「燕の御茶屋」の概要、浜離宮恩賜庭園の歴史等々、庭園ボランティアガイドのレクチャー拝聴後、普段は見られない、「燕の御茶屋」の名前の由来となったと云われる「長押(なげし)に使われた燕(燕子花との一説も伝わるようですが詳細は不明)形の釘隠し金具」や、将軍が座した「上段(じょうだん)」など、内部の意匠・間取り・建具等々を間近でじっくりと拝観。
そして将軍をはじめ奥方様、公家達も味わったであろう、室内からの大泉水(潮入の池)の眺望をしばし堪能。
「燕の御茶屋」は、11代将軍家斉の時代に建てられた御茶屋で、ほかの御茶屋より一回り小規模であることや、数寄屋建築の特色の強い建物であること、上段が設えられていることなどから、将軍自身が調度(生花・座敷飾)観賞、食事、和歌を詠むといった賓客接待の場として利用したものと考えられているようです。
<「燕の御茶屋」の特徴的な意匠や技法>
・室内中央に上段
・上段には三角形の地袋と円形の棚板、背面張り出しの地袋
・北側棚には2間にわたる3段の棚板
・釘隠し金具は24種類すべて異なる燕形の意匠
・縁の欄間板の透かし彫りには霞模様の意匠
・室内は色壁(大阪土)仕上げ、外部は漆喰仕上げ
・屋根は厚さ3mmのサワラ材の「こけら葺き」
・障子は美濃紙、石垣張り
今後は2017年度までに「鷹の御茶屋」、2020年東京五輪までに「延遼館」の復元が予定されていると聞きます。