ある日のこと、新川の住友ツインビルから南高橋のほうへ歩いて行くと「靴磨き」という看板が出ています。前日埃っぽいところを歩いて靴の汚れが気になっていたので、ちょうど良いと思い「お願いできますか」と声を掛けます。
「大丈夫ですよ!」、明るい声が返ってきます。
先客も無かったのですぐ椅子にかけて「クイックコース」をお願いします。靴を磨いてもらいながら話を聞いてみると、こちらで店開きをしてからもう1年半になるとか。普段はあまり平日の昼間にこのあたりを歩かないので、今まで気が付かなかったわけです。「クイック」というだけあって、手際よくやってもらいましたが、しっかりとした仕上がりです。
昔は、駅前やデパート前などでよく見かけた靴磨き屋さんですが、もともと戦後に戦争孤児などの生活の手段として始まった商売であるため、1代限りしか許されず、そうした靴磨き屋さんの高齢化に伴い数が減っているというお話でした。最近では八重洲地下などに固定店舗の靴磨き屋さんもありますが、道端の靴磨き屋さんと比べて、やや敷居も高く、また家賃の分、料金もちょっと高めになるので、どうしてもお手軽にとは行きません。こちらは、道に面した倉庫のような場所の入口でやっていて、昔ながらの靴磨き屋さんのお手軽さも兼ね備えています。
靴を磨き終えて帰り際に、松田さんが2年前に浅草で行われた「靴磨きギネス世界記録挑戦」に、800名の挑戦者の1人として参加した際にギネスから発行された証明書を見せてもらいました。2013年の11月22日、靴関連会社が集積する台東区アサヒ商店街で行われた挑戦は見事成功に終わり、2011年のUAE(アラブ首長国連邦)の451人を大幅に上回る記録を達成したそうです。
さて、中央区は実は靴には深い縁があり、1870年に佐倉藩(現、千葉県)出身の西村勝三が、こちらからそう遠くない入船3丁目で日本で最初の革靴製造工場を始めたという歴史があり、入船橋交差点脇には「靴業発祥の地」記念碑が建っています。松田さんは西村勝三の出身地と同じ千葉県から新川(越前堀)に通っているそうで何かご縁を感じます。
区内の街歩きなどでくたびれた靴に思いやりを!。。。営業時間は平日の午前だけですが、近くを通りかかったらちょっと腰かけてみるのは如何でしょうか。
【靴磨き(Shoe Shine Craftsmasn)松田尚巳】
営業時間:9:00~13:00頃まで(月、水、金。ただし祝日はお休み)
所在地:〒104‐0033 中央区新川2-28-11(ファミリーマート新川中央大橋店南隣)
【靴業発祥の地の碑】
所在地:〒104-0042 中央区入船3-2-10(新大橋通り 入船橋交差点.。イトーキ・ショールーム前)