坪内逍遥から「江戸演劇の大問屋」と賞賛された河竹黙阿弥は文化13年(1816)2月3日江戸日本橋通二丁目式部小路に生まれました。「黙阿弥の明治維新」(渡辺保)によれば「今の高島屋の裏通りに行く道で幕府の御殿医、久志本式部の屋敷があったところから式部小路という」とのこと。生家は裕福な商家で19歳で歌舞伎作者の道を歩みはじめ300余りの作品を世に送り出しました。現在でも上演されるよく知られたものが多く今月は4座が歌舞伎で幕開けですが、歌舞伎座「茨木」「雪暮夜入谷畦道‐直侍」、新橋演舞場「弁天娘女男白浪」、浅草公会堂「三人吉三」、国立劇場「小春穏沖津白浪―小狐礼三」とずらりと黙阿弥作品が並びました。三越劇場の新派公演も「糸桜―黙阿弥家の人々」です。その中で「黙阿弥生誕200年」を謳っている国立劇場で初芝居。
国立劇場はお正月恒例の太神楽が開演前のロビーで新年を寿ぎそして「見物に親切 役者に親切 座元に親切 これが作者の心得なりと戯場国(しばいのくに)に脈々と受け継がれたる三親切 その源は河竹の流れのごとく三百有余の狂言を書きも書きたり黙阿弥翁 新玉の歳改まり齢重ねて二百歳、、」とこれも恒例名調子の口上板、役者羽子板と初春気分満載。「小狐礼三」は黙阿弥得意の白浪物にお家騒動がからんだもの。狐の妖術を使う菊之助さん演じる礼三が美しい田舎娘から凛々しい男姿になって鳥居の上での派手な立ち回りとお正月にぴったりの華やかさ。
歌舞伎座の入り口で係りの方が「海老蔵さんは演舞場ですよ」と言う声が聞こえました。
勿論歌舞伎座も満席。「二条城の清正」は幸四郎さん演じる清正と孫の金太郎君の秀頼の組み合わせで大きくなった金太郎君に拍手喝采。玉三郎さん久しぶりの「吉田屋」の夕霧、染五郎さんのすっきりした「直侍」と芝雀での最後となる三千歳の組み合わせと見どころ満載。華やかな晴れ着姿が一杯の劇場で初春気分を味わいませんか。
歌舞伎座は26日千穐楽
お問い合わせはチケットホン松竹0570-000-489(10時~18時)