東京中央ネットの「第2回中央区の花街 その歴史と現在」
(http://www.tokyochuo.net/issue/city/4_geisya/geisya.html)によると、
中央区には新橋、柳橋、葭町、新富町、日本橋、霊岸島と6つの花街があったそうです。
(大正15年度の花柳名鑑)。
現在花街として残っているのは新橋と葭町の2つです。
※柳橋の花街は台東区に分類されるかもわかりませんが、名鑑によると組合事務所は当時
の日本橋区にあったようです。
今回は、その中から泉鏡花の小説「日本橋」の舞台でもある日本橋花街を散策しました。
小説「日本橋」は1914年に千章館から出版された泉鏡花の代表作の1つです。
本を図書館で借りはしたのですが、文章が昔の文体で全く理解できそうになかったため、
諦めて映画(1956年/市川崑監督)を見ることにしました。
ただ、借りた本の表紙と挿絵は小村雪岱(こむらせったい)が描いたもので、非常に味のある絵です。
この絵を見られただけでも本を借りた甲斐があったと思っています。
小説の内容には触れませんが、物語は主人公のお孝を中心に、清葉、お千世、葛城晋三、
赤熊といった個性的な登場人物が織りなすストーリーが展開します。
映画の各場面は小説の挿絵によく似ており、ストーリーはもちろん雰囲気も最高で、
見ていてとても面白い映画でした。機会があれば是非ご覧になられればと思います。
日本橋花街の場所ですが、元大工町、檜物町、数寄屋町あたり一帯(現在の八重洲1丁目
・日本橋2丁目・3丁目の一部)にあったようです。大まかには地図の赤枠のあたりと思われます。
このあたりを歩いてみると、映画や小説の挿絵にでてくるような景色はありませんが、
界隈には路地も残っており、飲み処も多いところが当時の花街を思わせる部分でしょうか。
老舗の割烹「嶋村」や酒席「いずみや」、そば処「やぶ久」、久寿もちの「長門」、
おでんの「お多幸」などの老舗は日本橋花街の最盛期のころからあった店なのかなと
当時を偲んで散策しました。(路地や町並みは写真をご参照)
また、日本橋芸妓組合が日本橋桜通りの東京駅側から八重洲仲通に進み、真ん中あたりに
ありました。地図物語「あの日の日本橋」(武揚堂)に付属する火災保険特殊地図
(通称「火保図」昭和25年~30年頃)に名前を確認することができます。
※本ブログの地図上では、青の星印が組合のあった場所と思われます。
映画「日本橋」では、一石橋と延命地蔵尊(日本橋西河岸地蔵寺協会)のシーンがよく出
てきます。延命地蔵尊には「お千世の図額」が保存されており、これは、新派の俳優花柳
章太郎がお千世役を演じた際に奉納したものです。この絵も小説の表紙と口絵を描いた
小村雪岱によるものです。絵は本堂の中に飾られてあり、外からもちらっと見ることがで
きました(説明版によると、希望者は申し出れば絵を見学できるらしいです。)。
また、延命地蔵尊は縁結びとしてもご利益があるそうです。
一石橋と延命地蔵尊は地図上に赤の星印で示しました。