「築地小劇場」は、『ものしり百科』68頁でも紹介されているように、日本で最初の新劇の専門劇場で、1924年(大正13) 6月、東京市京橋区(現,中央区) 築地2丁目に新築開場した。
永井荷風は、1924年(大正13) 6月23日の『断腸亭日乗』で次のように記している(岩波文庫の『摘録』には収録されていない)。
>夜お栄を携へ銀座を歩み築地に出づ。籾山氏邸址の一隅に築地小劇場なるもの建てられたり。土方輿志小山内薫二氏の経営する所なり。之に隣接して活動写真館の如きものあれど夜中にて判明せず。震災後籾山氏の屋敷には樹木鬱然たりしが今は倉庫の如きもの建連りて見るかげもなき處となれり。庭後君曾てこゝに住せし時その庭を眺めて、枝かはすなつめざくろや庭の秋。また枇杷に木によき小禽来る冬日哉など吟じられたり。子が令閨もいまは亡し。庭後子が遅日鶯など題したる著作は皆この築地の邸にて筆執られしなり。其等の事を思へば倉(氵偏)桑の感に堪えず。
以下は、現在の姿。 大正13年当時をしのばせるものは全くない。