8月中旬に築地を案内する機会があり、1か月程の期間で改めて築地を勉強しなおし、
なんて面白い所なんだと再認識させられました。
築地の魅力を分類すると、以下にカテゴライズされるかと思います。
①築地の歴史(1) 築地市場 場内および場外
②築地の歴史(2) 埋立と本願寺
③築地の歴史(3) 外国人居留地
④建築遺産
⑤グルメの宝庫
④⑤は①~③の歴史や立地との関係で理解するとさらに魅力が増すと思います。
今回は、そんな築地の魅力の中から「④建築遺産」にスポットを当ててみたいとと
思います。
築地の建築遺産は、以下に分類できると思います。
ア. 昭和初期の街並み(町屋群、看板建築、路地)
イ. 寺院
ウ. 外国人居留地の面影
エ. 扇型の築地市場
このうち、アの古い町屋や看板建築、イの一部の寺院は、ワールドモニュメント財団
(米国の非営利団体)が2年に1回発表する危機遺産リストとしても選出され、存続が
危ぶまれる歴史的建造物群として世界的にも注目されている代物です。
以下に、建築遺産の分布地図を示します。
◆◆築地周辺の建築遺産分布◆◆
ア. 昭和初期の街並み(町屋群、看板建築、路地)
町屋、看板建築、路地は、築地1丁目と2丁目の新富町寄りの部分と
築地6丁目~7丁目にかけてのエリアに多くみられます。
個人的には、広い範囲に昭和な雰囲気を色濃く残す6丁目界隈が一番好きです。
<築地2丁目の路地、築地6丁目の看板建築(銅板)>
<築地6丁目の町屋>
もう一つ、場外市場は、混雑と店のひさしに隠れて見落としがちですが、
上を見上げてみると看板建築が多いのに気付きます。
また、メインストリートの東通り、中通り、西通りを結ぶ非常に細い路地が
何本もあり、路地の両脇にも店があるので、「えっ?こんなところにも店が」
という新鮮な驚きに出会えます。
<場外の看板建築(モルタル)、場外の通り抜け路地>
ちなみに「看板建築」とは、木造の建物を銅板やモルタルで囲って耐火性を
高めた建物で、囲いの材質によって「銅板型」と「モルタル型」に分類されます。
銅板やモルタルに看板のように模様等、様々な意匠を施すことができたため、
「看板建築」と呼ばれるようです。
こうした街並み、いつまでも残って欲しいです。
イ.寺院
ここでは築地本願寺には当たり前すぎるのでふれません。
場外は、もともと本願寺の寺内町で、多くさんのお寺が整然と密集して並んで
いました。
関東大震災後に殆どが移転した経緯があり、いまではほんの幾つかが残るだけです。
歴史的建築物という点では、この中の「円正寺」は外せないと思います。
円正寺は側面が場外市場の店舗と一体化され、看板建築とお寺が融合したような
他では見られない珍しい景観をもち、必見だと思います。
(この景観もずっと残ってほしいです)
<円正寺(右側が店舗と一体化している)>
ウ.外国人居留地の面影
外国人居留地は、今の晴海通りのあたりから入船の辺りまでと考えて
良さそうですが、中心地は明石町一帯です。
建築物としては、当時から残る建物としてトイスラー記念館やカトリック築地協会
が残っています。
他に聖ルカ礼拝堂があったりガス灯が残っていたり、また一帯は緑が多く、洋風な
雰囲気を感じ取ることができるかと思います。
<聖ルカ礼拝堂、トイスラー記念館>
<築地カトリック教会>
エ.扇型の築地市場
扇型の築地市場の建物そのもの、場内の仲卸業者の売り場や魚河岸横丁の
建物、それから活気のある市場の雰囲気も、私にとっては魅力的な建築物の一つです。
ただ、こちらは豊洲への移転後にはなくなってしまうので、今のうちに行って
おきましょう。
それから一点補足します。
築地は、今は殆ど埋め立てられていますが、もともと築地川を中心に水路が
張り巡らされた土地で、跡地は緑道になってるところも多く、緑も豊かです。
特に聖路加国際病院の一帯は歩いていて気持ちいいですね。古地図と現代地図、
さらに当時の写真等を見比べながら、一帯を散策すると楽しいです。
今回は建築遺産という観点で、築地を紹介しました。
機会があれば、グルメという観点でも記事を書いてみたいと思います。
歴史と建築物とグルメ。市場は移転しますが、それでも築地は人を飽きさせない魅力に
あふれています。