10月6日、聖路加国際大学二号館にて、アスベストに関する講義がありました。 講師は、中皮腫・じん肺・アスベストセンターの事務局長 永倉 冬史さんでした。
当日は、子供さんへの被害を心配するお母さん、お父さん方が聴講に訪れていらっしゃいました。
「身近に迫るアスベスト問題」
そもそも、アスベストが建材に使用されることになったのは、「耐火性、防音性、断電性、加工しやすい、安い」と言った理由で、「保温材、断熱材、建築材料に優れている」といった一端があるとの見解で、昭和25 年頃からの建設に使用されました。 その後、「アスベストの粉末を吸うと、肺がんになる」ということが発表され、日本でのアスベストの輸入は2004年に全面禁止になりました。
「アスベストを吸引すると、30年~50年後には、肺がんを引き起こす」事があるという医学誌での発表があります。
「アスベストが引き起こすガン」は、二つのタイプがあり、一つは肺がんで、もう一つは"中皮腫と呼ばれる肺を包む膜に出来るガン"です。 日本では2005年以降の建材には使用されなくなりました。
しかし、建設されたビルや建材には今も、大量のアスベストが残ったままです。
「吹付アスベスト」という、鉄板や管に吹き付けたものは、もこもこしており、ちょっとした刺激で粉となり、飛散するおそれがあり、これが一番危険とのことです。 古い学校の天井などにも使用されており、掃除のモップでつついたりすると、アスベストが落ちてきて、吸引することになり、こんな遊びは絶対に止めましょう。 この「吹付アスベスト」が使用されている場所としては、鉄骨や鉄筋コンクリート構造の大型建物や、人の集まる大型の建造物にあることが多いとのことです。 これは、重い物を支えるため、火災防止の観点から、鉄骨や鉄筋にアスベストを吹き付けているとのご説明でした。
勿論、厚生省、国土交通省は解体する前に、建物にアスベストが使用されているか否かを調査することを義務付けていますが、なかには、そういう手続きを無視して、工事を行う業者がいるらしいのです。
解体工事を行う場合には、「建物等の解体等の作業に関するお知らせ」等の看板の掲示が必要です。 こういう看板を掲示しないで作業を進めているのは、我々にとって大変なことです。 健康被害を防ぐために、工事を安全に遂行してもらう為に、 区役所に一報しましょう。
東日本大震災の発生後、ボランティア活動で壊れた家屋の片付けに行った方々の中には、アスベストの危険性を知らずに行かれた方々がいたとお聞きして、彼らに害が無い様にと、祈っています。
アスベストの悪影響を知らずに吸引した方でも、そんなに心配しすぎることも無いとも教えて頂きました。 また、アスベストは、レントゲン写真には写らないので、あわてて、医者に駆け込む必要もないと教わり、大事なことは、次からは"吸わないように予防する"ことだと教えて頂きました。
そこで、私たちが、最も気を付けないといけないのは、解体中のビルや内装の改装を行っているビルには近寄らないことです。 そして、風が吹いた時には、アスベストの粉が飛散するので、吸わないように、専用の防塵マスクを着用することだと教えて頂きました。 解体工事中のビルには、この他にも、上からパイプが落下したとかの事故も発生していますので、近寄らないようにしましょう。
アスベスト吸引防止の"防じんマスク" は、3Mという会社の製品が優れているとお聞きしました。薬局などで、ご相談されたらよいと思います。
「鞄に常時入れておき、運悪くそういう現場に行きあたった時には、すぐ着用」し、緊急避難袋に入れておいたら良いと、教えてくれました。
講義の後には、次のクイズがありました。 少し、知識が深まった気がしました。
1.アスベストのうち、最も毒性の高いのは、吹付である。 (〇)
2.ガーゼのマスクは、アスベストを吸わないようにするのに有効である。(X)
(ガーゼでは、布の穴がアスベストの粉より大きい。また、マスクを顔に密着しないと防塵効果が無いと、着用方法まで教えて頂きました)
3.水を撒くとアスベストは飛散しにくい。(〇)
(でも、乾燥したときには、飛散する)
4.アスベストを吸った可能性がある場合は、レントゲン検査を受けた方がよい。(X)
(アスベストは、レントゲン写真には写らない)
5.公共機関には危険なアスベストは使われていない。(X)
(古い建物には、使われています。 解体工事、内装の回収場面では、気を付けましょう)
6.建物を解体する時には、アスベストの有無を公表しなくてはならない。(〇)
( ビルの解体工事の時に、白い看板に、①解体工事のお知らせなどが掲示されます。 そこには、アスベストの有無などを表示しなければなりません。そういう看板を掲示せずに工事を進めていると違反です。)
アスベストに関する厚生労働省のHPは、次の通りです。
実は、3年ほど前に、永倉さんの講義を受けたことをすっかり忘れていました。 その時の、ブログもご参考にして下さい。
/archive/2013/06/-mayjune-2013.html
追伸:次回は、2016年11月10日、10時から聖路加国際大学二号館にて開催されます。