桜紅葉(さくらもみじ)という言葉もあり、ソメイヨシノの紅葉もイロハカエデ同様美しいとされますが、注目度の点では、後塵を拝しているのが実情です。
イロハカエデの紅葉は、個々の葉の繊細な形状と移ろい行く色味の美しさはもとより、樹全体のまとまりも見事です。
一方ソメイヨシノの場合、紅葉の時期になると、葉がぽつぽつと紅葉して、紅葉が極まったものから順次落葉。
樹全体もまとまりを欠き、すけすけした印象は拭えません。
葉がやや厚手で、裏は地味な色合いもあってか、太陽の光を透かして見ても赤みの鮮やかさが引き立たない点も、ウイークポイントと云われます。
然し乍ら、ソメイヨシノの紅葉にも、赤やら褐色やら黄色やら、様々な色味の葉があり、一枚の葉の中にもグラデーションが見られたりと、各々多様です。
虫食いの跡も、造形美のひとつと聞きます。
敷き詰められた落ち葉を手に取ってみると、個々の違いを再発見できます。
イロハカエデとはまた一味違ったソメイヨシノの紅葉の観賞ポイントです。
浜離宮恩賜庭園では、春の華やかな景観とはまた趣を異にする、落ち着いた晩秋の風情が楽しめます。