2月歌舞伎座昼の部に江戸好き仲間を案内することになりました。初めての団体鑑賞ですがお目当ては「四千両」の「伝馬町西大牢の場」です。そのリアルさで初演時から大評判をとっている一場です。
安政2年(1855)元小人目付の藤岡藤十郎と野州無宿の富蔵が江戸城の御金蔵から四千両を盗んだという驚愕の事件を歌舞伎化したもので、流石に江戸期の上演は無理、明治に変わったので主人公の名も実名、五代目尾上菊五郎の富蔵、7代目市川團蔵の藤岡藤十郎の配役で明治18年(1865)千歳座(今の明治座)で初演されました。
話題を呼んだこの「伝馬町西大牢」の場。黙阿弥の情報源は五代目菊五郎と親交のあった田村成義。田村成義は牢屋同心・鍵役を務めた田村金太郎の養子で、本人も牢獄に勤めた経験があり、囚人たちの姿やしきたりのリアルさはこのお蔭です。田村成義はその後歌舞伎座の相談役を務め大正初めに松竹に経営権が移るまでは実質的に歌舞伎座を支配、「田村将軍」と呼ばれていたそうです。(「歌舞伎座五代」石山俊彦)
今回演じるのは当代の菊五郎さんと梅玉さん、牢名主は左團次さんです。
序幕第一場で「みそはちくまに限るのう」というせりふに出てくる「ちくま味噌」は今も永代橋のたもとにあり、ご存じのように赤穂浪士の引き揚げ時に「甘酒を振る舞った」という話が残っているお店。
観劇後に近くのカフェに席を移し「入牢者を叩くきめ板の使い方、牢法を聞かせる長セリフなど凄いね」と盛り上がり「伝馬町牢屋敷跡」の話になると、流石に江戸好き、全員行ったことあり。日本橋小伝馬町の十思スクエア入り口には精巧な牢屋敷の模型もあり、お芝居を見てから見るか、見た後見るかはお任せするとして牢屋敷跡やこの模型を見るとイメージが膨らみます。人気狂言なので今回見損ねた方は是非次回をお楽しみに。
「小伝馬町牢屋敷展示館」
日本橋小伝馬町5-1 十思スクエア内
月~金 9時~18時