「助六」は歌舞伎十八番の中でもよく上演され歌舞伎に余りなじみのない方にも知られている演目の一つですが、今回は成田屋が「助六」を上演する時だけ演奏する河東節が始まって300年を記念しての上演です。「助六」は人気狂言なので成田屋以外の役者さんも演じますが、其の時は外題が「助六曲輪初花桜」「助六曲輪菊」等となり河東節ではなく長唄や清元と替わるのは皆様ご存じのことと思います。「助六」と河東節の組み合わせがいつから始まったのか、今月の筋書きに古井戸秀夫さんが執筆されているので引用しますと「二代目團十郎の「助六」の初演は正徳3年(1713)。再演は3年後でその時から江戸節の浄瑠璃による「助六の出端」がつくことになる。語ったのは元祖河東。詞章はほぼそのまま現在まで語り継がれている」とのこと。元祖河東の生家は岡山藩御用達の日本橋の魚問屋で天満屋。築地本願寺に墓碑があり「酒と遊芸に遊んで豪家を破産させた」とあるそうです。(見に行かなくては)新潮日本人名辞典にも「江戸半太夫の門下で出藍の誉れ高く享保元年独立」とありました。
さて、お芝居です。幕が開き口上を述べるのは1月襲名した三代目右團次、作品の由来の説明(助六の鉢巻、下駄、蛇の目は江戸時代は贔屓筋のご祝儀でしたが、今回の鉢巻も魚河岸からのものだそうです)のあと「河東節ご連中様お始め下さい」の挨拶と共に舞台正面の朱塗りの大籬の御簾の中から三味線が聞こえはじめ、客席の興奮が段々高まってくるのがわかります。助六の出で興奮は最高潮。揚巻は雀右衛門、意休は左團次、白酒売りは菊五郎さんです。通人役の亀三郎さんがご自身の5月の襲名公演のPRで笑いを取っています。
桟敷席に舞妓さん4人をみかけました。「?!」幕間に売店で声をかけてみました。「うちら京都の祇園からどす」と返されました。やはり海老様凄い人気ですね。同行者も「睨んでもらうと風邪が治る」と信じています。「今日は少し舞台から遠いので(凄い人気で今日は6列目)効き目が薄いかも・・」と憎たらしい。
売店で見つけたのは「走井の鳩もなか」(250円)夜一幕目の「引窓」(「双蝶々曲輪日記」)の舞台が「翌日の放生会の供物の準備をしている」という設定なのでその放生会が行われる石清水八幡宮の鳥居前で営業している「走井餅本舗」の新作です。それにしても毎月よく探し出してくるものだと感心しています。
中に藤十郎さんと仁左衛門さん二人の「女五右衛門」。「絶景かな」の石川五右衛門を女にしたパロディですが、満開の桜の咲き誇る南禅寺山門の舞台の美しさ。大物二人の贅沢な組み合わせとあって目を奪われる一幕です。
三月大歌舞伎は27日千穐楽 チケットのお問い合わせはチケットホン松竹0570-000-489
10時から18時まで